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≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠ 【ルイズ】 わかったわ!『先にシャワー浴びてこいよ』ってやつね!!!!!!!!! 優しくしてね!!!!!!!! ≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠ ↓ ≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠ 【ルイズ】 私のドラゴンころしはあまりにも魔物を葬り続けたことで、 幽界のモノすら葬れるほどの退魔能力を持っているのよ…… ≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠≠ ルイズ ルイズステータス: 装備: 技・術:(相手を倒すと回復・強くなる暴食編のモンスターたちは天敵) 必殺技: 戦闘スキル ━━━━━ フ ィ ー ネ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【ルカさん/終わりを謳う者】 【Lv.30】 【HP:663/663】 【MP:440/440】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ,ィi「<//> ミt、 //> ̄ ̄ ̄ >< \ヽ /// 〉ミt、 ヽ. // \ - マ{ T℡゚, // \ イ ___ マ } }} ゚, {/ ゝ }从伐笏} ∨ⅱ i { ゚. / 二_---′ i }¨¨7. マ ∨ 夊芳 ヽ 从/ }¨ ゚ ・ランチキ男女の中で、唯一の処女(重要!) 麻薬で育った。 . { l l ∨ゝ% , ′ /} /} ゚ / \ \ ≧ イ}// } |γ ‐=〈  ̄ 7----,ィi「 ヽマ { l ヽ \. / /l/ ‐= 二ニzzzzゝ斗t允孑ゝ \ r< ‐=≦ r ℡---〈 / /777ム斗匕孑<≠≧o。、ゝ--≪≧o。 / //777777ヽ / ゝゝ斗匕孑====ゝ/二二二ゝ≧o。 ____________. / //////////∧/ 7 7///77777777ヽヽヽ/////////.----〈_lγ⌒ ヽヽ////}、 | |////////////∧ } ∨/// /../ / Ⅷ// ゚。 ! !//////////////} } }/// , ' ., ' /,ィi㌃¨¨ミ /{{/ ‘ ゝl/////////////// / // , ' , ' / // / ̄ ̄/\ . ∧ ___ゝ///////////// // , ' , '. ゝ/ /////////ミt、 ム斗777≧o。、/////ノ / , ' , '. 〈 \//////////ヘ 〈777\/,ィェ///77777 {/ , ' / \ \///////////z)\ l| |///////// , ' /. ゚ 。 \///// >,ィi㌃ 7 l| |////// \_, ' /. , \Z/〃/ヽ ,ィ==il| ト、 ./ ,イ⌒! / / / \ /// |/ / l| |/ イ ノ/ /. / ヽ {// } {| |⌒/il|| ´ > ' ´ ' //. / / /ゝ/ { i>'| | | il||______________ // / / 〉x≪ Y!- '`il| | ノ//////> ´ / >‐= ≧o。──────────────────────────────────────────────── 祖先:【イフリート】 弱点:水ダメージ1.1倍 耐性:火ダメージ0.9倍、龍属性ダメージ0,9倍 称号:【ベルセルク】:戦いの螺旋に囚われし者。ATK+50 SPD-50 **アビリティ ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 【生存本能】:戦闘不能ダメージを受けたとき、一度だけHP1で耐える。 【悪食】:通常攻撃で相手を倒したとき、HP全回復 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ステータス: ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ATK:322 +50 +120 =492 INT:195 -50 =145 DEF:195 +40 =235 RES:195 +60 =255 SPD:197 -30 -50=117 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 装備: ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 武器:『鉄塊剣』(剣) 強化: 進化:??? 効果:【“霊体物理耐性”無効】 ステータス補正値:ATK+120 INT-50 SPD-30 ───────────────────────────────────── 装備:『退魔のマント』 効果:【なし】 ステータス補正値:DEF+40 RES+60 ───────────────────────────────────── 装飾品:『修羅の刻印Ⅰ』 効果:【HP10%以下のとき、攻撃全てに“絶対先制”付与】 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 技・術:(相手を倒すと回復・強くなる暴食編のモンスターたちは天敵) ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 『セイバーブレード』…威力20 消費MP20 対象:相手1体(近距離) ATK依存 効果:【なし】 属性:なし ───────────────────────────────────── 『ブレイジング・タイフォーン』…威力160 消費MP80 対象:相手3体まで(近距離) ATK依存 効果:【自身にHPの10分の1のダメージ】 属性:火 ───────────────────────────────────── 『ブレイジング・ソニックブレード』…威力60 消費MP40 対象:相手1体(近距離) ATK依存 効果:【先制】 属性:炎 ───────────────────────────────────── 『ブレイジング・ダムドストローク』…威力180+? 消費MP120 対象:相手1体(近距離) ATK依存 効果:【残存HPを半分消費し、その分威力上昇】 属性:炎 ───────────────────────────────────── 『ブレイジング・ドラゴンスレイブ』…威力120 消費MP60 対象:相手1体(近距離) ATK依存 効果:【HPが10%以下のとき、技威力2倍】 【龍種モンスターに対して技威力3倍】 属性:炎 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 必殺技: ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 『ファイアブラスト×スラッシュ』…威力20 消費MP100 対象:相手1体~2体(近距離) ATK依存 効果:【戦闘中1回のみ】 【2回攻撃】 属性:火 デメリット:【次のターン終了時まで攻撃不可】 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 戦闘スキル ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 【剣術の心得】Lv9:レベルアップまで@20 上級の剣術が超使える程度。 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 戻る
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前ページ次ページルイズ・キングダム!! 私の名はルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエール。 つい数日前まで『ゼロ』のルイズと蔑称されていたわ。 でも今はもう違う。 3日前の授業での事、前回の授業をサボった私に『赤土』のシュヴルーズ先生が復習のためにと『錬金』を行うように言ってきた。 クラスメイトは私が「また」爆発を起こすんじゃないかと顔を青くして見守っていたが、その時既に私はそれまでの私では無かったのだ。 颯爽とエプロンを身に付けて教壇へと歩く。 この『エプロン』は百万迷宮で使われる一般的なアイテムだが、マジックアイテムとしか思えない不思議な能力があった。 すなわち「どんな素材でも肉に変えて食べられるようにする」という効果だ。 木でも牙でも機械でも、果ては魔力や情報のようなカタチの無いようなモノまで肉に変える、百万迷宮脅威のクオリティ! 基本的に迷宮探索中に倒したモンスターを料理するのに使われるという事実は意図的に忘却した。 ともかく杖の代わりに包丁を振り、私は教壇に置かれた石コロをお肉に変える。 「うそっ!? ゼロのルイズが魔法を成功したわよ!?」 「すげぇ! 肉だ……」 「ああ、それも美味そうな肉だ……」 誰もが驚いて、教室がどよめいた。 いやしかしと生徒達は思いなおす。肉を『錬金』で生み出すことは、決して不可能では無いのだから。 彼等に挑戦的な視線を向けて、私はその肉を素早く捌いてサシミにしてショウガ醤油を付けて先生とクラスの皆に振舞ったのである。 「まぁっ! このお味は最高級のアルビオン牛の霜降りですわね!」 「これはっ……生姜醤油が霜降り脂のクドさを消して、見事に旨味だけをしっかりと伝えてくる。絶品だ」 「うーまーいーぞー!!」 「ってゆーか牛刺しとか醤油は無いだろう、ファンタジー的に考えて」 誰もがその絶品の味に舌鼓を打って喜んだ。 私はルイズ。職業は『料理人』。 そして新たに付けられた二つ名は『お肉のルイズ』 ……うん。正直『ゼロ』のまんま方が良かった気がヒシヒシとしてるわよ。 <ルイズ・キングダム!!> 「むにゃむにゃ……早く魔導師になりたーい」 某妖怪人間のような寝言を呟いて、『お肉』のルイズは目を覚ました。 ちなみに一部食通の生徒の間では『最高級霜降り肉のルイズ』と呼ばれて、尊敬の念を向けられている事を本人は知らない。 もし知っても絶対喜ばないだろうけど。 目を覚ましたルイズは自分が腕の中にヌイグルミを抱いているのに気が付く。 茶色くて柔らかくて暖かい子犬みたいな……クロビスが居た。 一瞬ギョッとなるルイズだったが、そう言えば昨夜宮廷メンバーが自分の部屋に泊まりに来ていた事を思い出す。 「宮廷は雨が降ってきて大変なんだ」 そう言ってお休みセットを持って部屋まで押しかけてきたクロビス。 まぁ普通使い魔はよほど大型の物や水生の生き物を除いて主人の部屋に住むのが普通だから、クロビスのように自分で国を作って勝手に暮らす方がおかしい。 なので、ルイズは快く部屋に泊めてやる事にした。 そしたらダッパ君とオババと輿担ぎ四人とモークまで一緒に来たと言うワケだ。 「迷宮ではこんな、天井一面から降り注ぐ雨なんてめったに無いからねぇ。 有るとしても『雨の部屋』のように決まった場所か、雲神が気まぐれにやって来た時か、あるいは上の階で貯水池の底が抜けた時ぐらいのモノじゃしなぁ」 とはオババこと『話の長い』バゼバゼの弁。 空の無い百万迷宮では迷宮の壁に結露した露を集めたり、井戸を掘ったり水路を引いたりするのが普通で、ハルケギニアのような『雨』はあまり無いから宮廷の建物も雨対策がしていないと言う。 最初は珍しさに大騒ぎしていたクロビス達も、雨漏りする中で寝るのは流石に嫌だったので、ルイズの部屋を訪ねてきたのだ。 その結果、クロビスはルイズと一緒にベッドの中。 ダッパ君とモークは部屋の隅で毛布を敷いて。 オババは自分の輿に布団を敷いて眠ることになったのが昨夜。 気が付けば雨が上って良い天気になっていた。 ――あ、おはようございます―― 「おはようダッパ君。良い天気ね」 昨日この部屋で夕食として食べていた鍋物を温めなおしながら、ルイズの起床に気が付いたダッパ君が挨拶してくる。 「二度と同じ味わい無し」と言われるほどテキトーに作られた小鬼汁を部屋の中で調理しているが煙は出ない。 迷宮で貴重な光熱元として使用される『星』のカケラを使って温めているからだ。 世界が迷宮に沈むより前、『天空』と呼ばれる場所で輝いていたと伝えられる『星』は、 迷宮に住む人々の間で無くてはならない物として採集されたり収穫されたり採掘されたりしている。 それが本当にハルケギニアの夜空に浮かぶ星と同じものかは、ルイズにもダッパ君にも判らない事だった。 グツグツと煮え始める小鬼汁を横目に、手早く洗顔の仕度と着替えの世話とピンクブロンドの髪のブラッシングをしてくれるダッパ君は、やはり従者としてとても優秀だ。 「うーんムニャムニャ。もう食べられ……たくないぃ」 ルイズの身支度が終わる頃、クロビスがちょっとグロい寝言を最後にムクリと起きてきた。 小鬼汁の匂いにつられてか、オババ達も起きてくる。 「いただきまーす!」「母神様に感謝じゃ」「…………」――おかわりありますよ―― 何処から出したのか折りたたみ式の短い脚が付いたテーブル「ちゃぶ台」を置いて、小鬼達の朝食が始まった。 それを横目に食堂に向かうルイズ。 以前に使い魔との親交を深めるために食事を共にする事も考えたルイズだったが、その考えはもう改めた。 召喚の翌日にごちそうになった小鬼汁はなんとも表現できない怪奇な味だったから。 それにゴキブリとか食うらしいし。毒々しい太った赤い魚とかも食べていたし。 そんな事もあって、使い魔の食生活にはなるべく手も口も出さない事にしたルイズだった。 ただ、ゴキブリを食べるのだけは禁止しておこうと注意はしたが。 そしたら「学院内のはもうほとんど食べつくしたからなぁ」とか答えられて戦慄したものだ。 「食事の前に嫌なこと思い出しちゃった……」 少し食欲をなくしながら、食堂へと向かうルイズであった。 「親方! お肉のルイズ様がいらっしゃいましたー!」 「おおっ! ようこそ、ラ・ヴァリエール公爵令嬢!! 存分に食って……じゃねぇ、お召し上がりくださいませ」 食堂に入ると、料理長であるマルトー親方の手厚い歓迎を受けるルイズ。 彼女のテーブルの前にだけ、それはそれは豪華な、とても朝食とは思えない食事が用意されていた。 一昨日、『お肉』のメイジとして学院に一躍名を轟かせたルイズはマルトー親父から挑戦を受けた。 尾鰭がついたウワサの中に「食堂の料理よりウマイ」というのが有ったのがそもそもの原因。 そのせいで、たとえ貴族様が相手だろうと、学生に料理の事で引けをとるとは思えない。 料理人のプライドをかけて勝負すると、親方が決闘を申し込んできたのだ。 そうして、二人の熱い料理バトルは繰り広げられた。 具体的に書くと単行本数十冊の大作になるであろう壮絶な戦いは、小鬼が持ち込んだ謎の調味料によって決着する。 白いドロッとした粘液。 ピュアセレクトマヨネーズと呼ばれるらしい、ある百万迷宮のモンスターを倒すと手に入るというその調味料は、甘辛くコク深く、誰もを魅了する天上の美味をルイズの料理にもたらしたのだった。 勝負に敗れ学院を去ると言い出した親方を、ルイズは必死に説得して留めた。 そんな理由で去られては本気で困るからだ。 これからはお前が料理を作れとか言われたら迷惑だし、厨房の人々に恨まれてギーシュの二の舞はゴメンである。 だいたい『料理人』である自分はルイズにとって最高に不本意なので、勝ったからと言って嬉しくなど無い。 だから色々ともっともらしくて立派そうな理由を並べ立てて親方を止めたのだが、そのせいでルイズはマルトー以下厨房の人々から素晴らしい貴族だと尊敬される事となった。 「おうシエスタ! ヴァリエール様のために秘蔵のワインを開けてくれ!」 「はい! よろこんで!」 どこの居酒屋だメイド。 そんな感じで、今朝も早朝からカロリー過多なルイズであった。 「うらやましいよ『お肉』のルイズ。僕なんていまだに『血塗れ』のギーシュなのに……」 教室で、まだ彼女や友達からも微妙に避けられているギーシュが恨み言を言ってきた。 「……私だって『お肉』なんて二つ名は不本意よ」 憮然として言い返すルイズ。 そのまま二人でハァーっと溜め息をつく。 勝つとか負けるとか、名誉とか、本当の強さとかって何だろう。 そんな、ある意味貴族らしい悩みを思う二人の若者でありました。 その日の午後、ルイズは『王国』の視察に出かけた。 もちろん彼女が所属するトリステイン王国ではなくて、小鬼王国こと『新・古代魔神路地裏連合マジカル小鬼同盟横丁』に、だ。 先日新しく作ったという『農場』と『牧場』は王宮の裏手にある。 大臣コルベール先生の研究室の裏手で耕されている田んぼの上に、キラキラと輝く『星』が浮かぶ。 世界が迷宮に覆われた彼等の世界では、このような『星』を使うのが農業の基本。 熱と光を放つ星を管理しているのは、『逸材』と呼ばれる他の小鬼よりちょっとだけ優秀な小鬼だった。 星と対話し、その力を借りる星術に特化した職業『星術師』の小鬼『口から先に生まれた』ピピン。 ピンクのリボンをつけたその小鬼は、小鬼のクセにルイズも使えない魔術を使うのだった。 「泣かないわよ! こんな事で泣くもんですか!」orz<ルイズ そんな感じで劣等感を刺激されながら農場を見回る。 とは言っても、まだ出来たばかりの農場には耕されてタネをまかれたむき出しの土しか無いのだが。 開墾作業で更に農地を広げようと頑張る小鬼や、水撒きの作業を続ける小鬼。 遅めの昼食に小鬼汁の鍋を囲んで和気藹々と過ごす、傍らに鋤を立てかけた小鬼達。 そこには小さいながらも平和な田園風景が広がっていた。 おもいっきり学院の敷地内なのだけど。 向こうではメイドさんが洗濯物とか干してる。そしてレンタル小鬼が手伝ってる。 ちょっとシュールだった。 「いーのかしら、コレ……まぁ誰も文句言ってないから良いか」 考えるのは怒られてからで良いと、最近すっかりC調になったルイズは諦める。 明るい農村を横目に、次は牧場を見に行く。 牛とか馬とかって小鬼より大きいわよねー、どうしてんのかしらーとか考えていたら、そこには予想もしていなかったモノが飼われていたり。 「……ナニコレ?」 ルイズの目の前を悠々と泳ぐキンギョ。 毒々しいぐらい赤くて丸々と太った、ヒラヒラした大きなヒレが印象的なアレである。 アレが、子牛や羊ぐらいのサイズで空中をふよふよと泳いでいる姿を想像してもらいたい。 ギョロリとした巨大な目のどこに向いてるのかワカンナイ視線が正直キモイ。 百万迷宮で一般的な乗騎や農耕魚、また食料などとしても利用されるキンギョは、深階から昇階して来る超越種族『深人』の一種だが、大人しくて知能も低く酪農に向く、家畜化された『渡り魚』の一種だと言う。 渡り魚には他にも肉食のピラニアや口から銃口を生やしたテッポウウオなども居るとの事。 まぁそんなのと比べたら、キンギョなんてカワイイものだろう。 「って言うか、何時の間にこんなにたくさん連れて来たのよ?」 小鬼農場には10匹を超えるキンギョがふよふよと泳いでいる。 農地と比べて意外に数が多い事に疑問を感じたルイズが尋ねると、ダッパ君がヒドイ答えをくれる。 ――『牧場』の『施設』はこくみんになったモンスターをふやすこうかがあるんです―― 「え? 農場ってそーゆー施設なの? 1匹からでも増えるの? 一日で?」 ――はい。そうですがなにか?―― 「なんの魔法よそれは。物理法則がおかしいにも程があるわよ百万迷宮。 それに、この前アンタ達が食べてた赤い魚って……」 ここに泳いでるキンギョは名目上国民。 そして国民とか小魚のうちに焼いて食べちゃったりするのだ。 百万迷宮はホント地獄だぜファハーハー!(AA略) ――ちなみに、クサみがつよいのでミンチにしたりマヨネーズやきにしたりするとタンパクなアジワイでおいしいです―― 「いやーっ! 聞きたくない聞きたくないっ!」 桃色の髪をブンブン振り乱して、両耳をふさいで叫ぶルイズ。 いくらヤサグレていても良心ってモノがあるのだ。ちょっとだけ。 「そんな事よりクロビスは何処に居るのよ? 私に牧場と農地を見に来いって呼びつけたのはあの子なのよ?」 「おう、来たかルイズ! こっちだこっち!」 元気一杯で主人を呼び捨てにする使い魔。 とは言え、ルイズも国王を呼び捨てにする神官だからお互い様と言えるだろう。 むしろ傍目には仲の良い姉妹にも見えるぐらいだった。 そんなルイズの妹みたいなクロビス国王の声に、そちらへと行ってみると、すっかり旅装束を調えた小鬼王。 ぴかぴかに研ぎ上げたナイフと使い古した鎧、マントは普段のものではなくて毛皮の裏打ちされた暖かそうな物。 水筒や食料を腰に結び付けて、側らのキンギョにも荷物を括り付けている。 周囲に居る配下の小鬼達『国王親衛隊』も、粗末な布やおべんとうを身に付けて準備万端の様子だった。 「ナニやってんのよクロビス?」 「ナニって、これから野犬討伐に行くんだぞ。国民が安心して暮らせる環境をつくらんとな!」 勇気凛々で言い切るクロビス。 野犬に数回滅ぼされた国の国王のクセに、ちっともメゲてない。 「大丈夫なの、そんな事してて? まぁアンタは逃げ足だけは早いから平気とは思うけど。 とりあえず怪我には気をつけて、夕飯までには帰って来なさいよ」 「うーん、やつらは夜行性だから徹夜になると思うぞ。さあ、ルイズも早く仕度をするのだ!」 「――――――えっ?」 与えられたのは武器と鎧。 跨らされたのは専用の桃色キンギョ。 何がなんだか理解もしないうちに、野犬討伐に付き合わされるルイズであったとさ。 おまけの用語解説コーナー『百万迷宮の歩き方』 【エプロン】 コモン生活アイテム。つまり百万迷宮的には別にマジックアイテムでもなんでもない。 料理人は最初から持っている。でも3メガゴールドもする超高級品。 倒したモンスターから得た『素材』を全て『肉』に変えるという効果を持ち、 本文中にあるように機械だろうが情報だろうが肉に変えて食べられるように出来る。 更に職業『料理人』のキャラクターが使用して料理を作ると、食べた者の中からランダムで一人、 しばらくの間だけ元になったモンスターの能力を一つ習得できる効果が追加される。 結果、国王が火を吹いたり従者が飛行したり大臣が毒の胞子を撒いたりするように…… 繰り返すがマジックアイテムでもなんでもない、ただのエプロンである。 【農地と牧場】 両方とも生産施設。 生活レベルが上昇する農地はともかく、国民になったモンスターを複製できる牧場は凶悪。 条件次第では白衣の天使とか淫魔とか養殖できます。エローイ。 どうやって増やしているのかはワリと謎。ツガイじゃなくても増やせるからなぁ…… ちなみに初版ルールブックでは『農地』の効果が生活レベルの上昇ではなくて、 軍事レベルを上昇させると誤字られていたと言うオマケな話がある。 一面に広がる農地によって最強の軍事国家を作り出す。 それはそれでシュールで良いかもしれない。 【『口から先に生まれた』ピピン】 星術師にして小鬼の『逸材』。小柄なメスの小鬼で瞳にキラキラ星が浮いている。 趣味は白馬の王子様が来てくれる日を夢見る事。好きな物は平穏な生活。 雨や寒さから身を守ったり、人の心根を外見に映し出すおまじないを使える。 とか決めたところで、ひょっこり死ぬのが小鬼だが。 逸材とは、国に様々な効果をもたらす職業を持った優秀な国民の事で、 ランドメーカー程では無いが並みの民よりは優れていると言う存在の事。 ちなみに星術師の効果は『農地が有ると国家予算が1MG増える』というもの。 【キンギョ】 りっぱな深人系1レベルモンスター。『飛行』と『かばう』というスキルを持つ。 深人は下級のものこそ単なる飛ぶ魚だが、 上級のものになると「ふんぐるいむ」とか「いあいあ」とか言い出す巨大な海産物になる。 そりゃもう一部の人が大好きな海の邪神様とか居ますよもう大好き。 でもコイツは単なる魚。百万迷宮では主要な動物性タンパク質。 迷宮化に適応できずほぼ絶滅した牛や馬に替わる貴重な家畜として運搬乗騎食料と大活躍。 なお同じく下級天使であるハトなどの鶏肉も百万迷宮の民達のごちそうである。 バチ当たりなハナシだと思いますよ実際。 【野犬の討伐】 わざわざこんな事するクロビスは良い王様だなぁ――― とか思うかもしれないが、百万迷宮における小王国の宮廷の任務は大抵こんなモン。 民から要求される諸問題の解決こそが宮廷の存在意義と言っても良い。 でも野犬倒して凱旋帰国したら喝采で迎えられてパーティーとかあるから良いやん。 パーティーのメインになる「ごちそう」は倒した野犬の肉料理に違いないだろうけど。 前ページ次ページルイズ・キングダム!!
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「マスターよ、朝だ」 男がすやすやと眠る少女に語りかける、しかし少女は一寸も目に光がささらないようグッと閉じようとしといる とりあえず寝ている少女の毛布をはいだ 「な、なによ!なにごと!」 少女が驚きながら上体を起こす 「朝だから起こした」 「はぇ?そっそう・・・・ってあんた誰よ!」 寝ぼけた表情で男に怒鳴る少女、男が口を開く 「ロムだ」 第二話 少女の使い魔となった戦士 「ああ、昨日召喚した使い魔ね」 ロムを召喚した少女、ルイズはベットの上で上がり欠伸をひとつ、そして命令 「服」 ロムは椅子に掛かっている服を取りに行く、さらにルイズは命令する 「下着も取って」 「何処にある」 「そのクローゼットの下、引き出しに入っている」 言われるままに引き出しを明けて適当なのを取りだし制服と共に渡す するとルイズはネグリジェを脱ぎ始めたのでロムは少し慌てて後ろを向く (やれやれ、やはりこれだけは慣れないな。それにしても何故今女性の肌がこんなにも艶やかに見えるんだ・・・?以前はそれほどでもなかったのに・・・・) 兄さん、それは男性のサガです 「じゃあ服を着せて」 「・・・・・・・・」 ロムは目をそらしながらブラウスのボタンを留めていく 二人は着替えが終えて部屋から出ると目の前のドアから女の子が出てくる。長い赤毛で身長が高く、大きく突き出たバストが特徴的な少女、「微熱」のキュルケ・ツェルプストーだ 「おはよう。ルイズ」 「おはよう。キュルケ」 ルイズが嫌そうに返すと 「あらあら、やっぱり昨日の召喚は夢じゃなかったのね」 バカにした口調で言うと 「でも平民ではね~、ふふふ、あっはっはっは!」 含み笑いの後の大笑いのコンボにルイズはプルプル震えている (どうやらこの二人の仲は最悪のようだな・・・・、あまりお互い近づけない方が良いか) 二人の交流を見て学習するロム、するとキュルケの後ろから真っ赤で巨大なトカゲが現れた。尻尾が燃え盛る火で出来ているのが主人の胸の様に目立っている 「これって、サラマンダー?」 ルイズが悔しそうに尋ねた 「そうよー、見てよこの大きい尻尾についた大きな火、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ!惚れ惚れしちゃうわ~」 「あんた『火』属性だもんね」 「ええ。微熱のキュルケですもの、あなたと違って私はちゃんと自分に相応しい使い魔を召喚してるわ、それよりも・・・・あなたの使い魔は」 キュルケはルイズの後ろで手を腰に当てて一部始終を見ていたロムに視線を合わせる 「貴方お名前は?」 「ロム・ストール」 「ロム・ストール?ここらへんでは聞かない名前ね。じゃあお先に、ゼロのルイズ」 炎のような赤髪をかきあげ、サラマンダーと共にキュルケは去っていた (それにしても・・・・、いい男だったわ。) 「くやしー!何なのあの女!自分がサラマンダーを召喚したからって!」 「マスターは俺を召喚したからいいじゃないか」 「よくないわよ!メイジの実力を見るには使い魔を見ろって言うのよ!平民とサラマンダーじゃ犬と狼を比べるのと同じよ!!」 (その例えなら俺が狼だな) 「ところで、彼女、ゼロのルイズと言っていたが、『ゼロ』とは何だ?」 「あだ名よ、嫌いだけど」 ルイズはさっきよりトーンを落として呟いた 「彼女は自分の事を微熱だというのはわかるがマスターは何故ゼロなんだ?」 「うるさいわね、さっさと食堂へ行くわよ」 プンプンしながら奥へ歩いていくルイズ (そういえば昨日も周りの生徒は宙を浮いて移動していたがルイズは歩いていたな。それが関係しているのか?) トリステイン魔法学院の食堂は非常に広く、やたら長いテーブルが3つ並んである 前の椅子に座った先生やメイジが楽しそうに雑談している。 その上豪華な飾り付けがなされていてこの学院の華やかさを物語っている ロムはその物珍しさに周りに目を配り、気が付くとルイズが得意気に言った 「トリステイン魔法学院が魔法だけじゃないのよ。メイジはほぼ全員貴族なの。『貴族は魔法をもってしてその精神となす』がモットーのもと、貴族たるべき教育を存分受けるのよ」 ロムはその言葉を聞くと深く頷く。 彼もまた、クロノス族の族長である父の教えより身体だけではなく精神の成長が大切である事を教えられていた 「世界が違えど心の教えは変わらぬのだな」 「何か言った?」 さてロムはここに来て重大な問題に気付く。それは食べ物、エネルギー原の有無である。 もともとマシン生命体はエネルギーカップ、もしくはロムトロンと呼ばれる物でエネルギーを補給するのだが残念ながらこの世界にはどちらも無い。 エネルギーが補給出来ないことは餓死に繋がる・・・・。 「何ずっとパンとにらめっこしているのよ、ひょっとして食べないの?」 「いや・・・・、そうではないが・・・・」 椅子に座って朝食を食べているルイズが床であぐらをかいて皿を睨むロム見下ろして言う 「言っておくけど、渋っても何も出ないから。平民がここに入れる事だけでも珍しいのよ」 仕方がなくパンにかじりつくロム (硬い・・・硬すぎる・・・・、これは食べ物なんかじゃ無い。 こんなものを作った奴の顔を見てみたいな・・・・) などといつもは考えもしない事を心の中で呟き、良く噛んで飲み込む。そして・・・・ (・・・・なんとかなるか) どうやら大丈夫のようである
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前ページ次ページルイズの魔龍伝 6.ブルドンネ街 決闘から三日、ルイズの周囲は少しずつ変わっていった。 まず表立って馬鹿にする生徒が少なくなったのである。 メイジについて表す言葉に「メイジの実力を見るなら使い魔を見ろ」というのもあり 「ギーシュのゴーレムを圧倒的かつ一瞬で葬り去ったのはルイズの使い魔」 という衝撃的事実はあっという間に学院内を駆け巡っていた。 元々魔法以外の成績はトップクラスであり、家系もトリステインの中では相当に有名な部類に入るので 「あのルイズがとうとう」と感心する者もいたという。 「どうせ嘘に決まっている」「ルイズが凄いのではなく使い魔が凄い」 人づてに話を聞いた者や、ルイズを侮蔑目的でからかっている心無い者もいたものの 決闘の当事者であるギーシュとルイズ、更にこの決闘を見ていた彼女らのクラスメートも多く 何より使い魔の名前が「ゼロ」であったためルイズのクラスでは「ゼロ」とルイズを馬鹿にする者は一人もいなくなった。 「アンタが名前をゼロゼロ言うから私の二つ名が“ゼロ”のままじゃないのよーーーーーーー!!!!」 当人はこんな感じで相変わらずご立腹であったが。 「買い物に行くわよ」 その日の夜、ルイズから提案があった。 話によると明日は休日にあたる虚無の曜日なので街へ買い物に行くとの事らしい。 「それで、アンタの寝具と…剣ね、それを買うわ」 「…どういう風の吹き回しだ」 「あんたがボロっちぃマントで寝てるのがみっともないからよ! 使い魔の管理をするのも私の仕事!それに…私が受けた決闘で剣、壊しちゃったみたいだし…」 今までの待遇からするとあり得ない提案とちょっとしおらしくなった言動に疑心暗鬼になるゼロ。 この娘の事だ、何か物を買わせてまた雑務を押し付けるに違いないと彼は思ってしまった。 「物で釣っても俺は着替えの手伝いもしないし顔は洗わんからな」 使い魔が出来て色々と雑務をさせようというルイズの企みは事実失敗に終わっていた。 呼び出して2日目の朝は何とかなったものの、それ以降は着替えと洗顔に関しては 「そのぐらい自分でやれ」と断固として断られたのだ。(水は朝の鍛錬のついでに汲んでくれているようだが) 更に部屋の掃除と洗濯は率先してシエスタがやるようになってゼロをこき使う機会も無くなってしまった。 着替えと洗顔をやらないなら飯を抜こう、とは思い立ったがシエスタの話では 決闘で気を良くした厨房の人達がご飯を出してくれており、ゼロも 「俺の飯と、シエスタがルイズの世話をしている礼だ」 と薪割りや物の持ち運びなどの力仕事や使い魔への餌やり(使い魔達がゼロに妙に懐くかららしい)を 行っているので「言う事聞かないから飯を抜く」とはとても言い出せなかった。 しかし決闘で見事圧倒的な力の差を見せ勝利した使い魔、 褒美で何か買ってやろうという気持ちも無い訳ではなかった。 それがゼロの一言で見事に打ち砕かれた。 ゼロの鈍感な言葉にルイズの心に火が灯り、それは徐々に炎を形作る。 「あー…っそ! アンタ異世界から来たなら当然この世界のお金ってのは持って無いわよね?」 「そういえば…そうだな。元々流浪の身だから手持ちは殆ど無かったが…」 「いくら強くても騎士たるもの、剣を持ってないと駄目よねぇ…!」 「確かに…いや、向こう側にいた頃のように魔物を退治をして路銀を…」 「私がそんな事許可すると思う?それより何より、アンタの種族はこの世界でアンタだけ。 信用されるどころか下手すると魔物扱い、追う筈が追われる立場にねぇ…」 「くっ!」 この世界での路銀と、決闘で使い物にならなくなった剣の調達。 食事と寝床が保障された学院に数日いたおかげでそこまでゼロの考えが回っていなかった。 実を言えば雷龍剣には剣を使わない技もあるのだが、的確な指摘をされたゼロは すっかりルイズのペースに呑まれてしまいぐうの音も出なかった。 「まぁ、別に物を買い与えて働けって訳じゃないのよ? 私は決闘ですっごい活躍したゼロになんか買ってあげようかなーって思っただけ。 でも、そう思ってたのにガンダムが「物で釣っても働かない」って勝手に決めつけちゃって…」 「ぬぬ…」 「あー傷ついたなー、ご主人様すっごい悲しいなー」 あからさまな演技なのは分かっているのだが、もはや言い返す言葉が見つからないゼロ。 彼女が「あの言葉」を要求しているのは何となく感じてはいるが自分の意地がそれを言わせまいとしていた。 「ガンダムがもうちょっと素直ならねぇ…」 「(迂闊に疑ってしまった俺にも非がある… 仕方が無い、背に腹はかえられん…)」 「疑り深くなって…すまなかったな、ルイズ」 「もっと分かりやすく簡潔に」 「何?」 「反省しているんでしょ?じゃあもっと分かりやすい言葉がいいわ」 ルイズの顔はとてもにんまりしていた。 しかしそれはクックベリーパイを前にした時のような無邪気なものではなく、 何か黒いものが奥底にあるような邪悪なにんまり顔。 その顔を前にゼロはその言葉を言わざるを得なかった。 「……ごめんなさい」 「よろしい、じゃあ明日はお買い物ね」 ルイズ、召喚して以来初めてゼロより優位に立った瞬間であった。 「…プフッ」 「何がおかしい」 明くる朝、魔法学院前の正門前。 馬に乗ったゼロを見てルイズは思わずちょっと吹き出していた。 ゼロの身長こそルイズよりも大きいとはいえ、ゼロの頭身は大体2.5~3頭身であり 馬に乗っているゼロの姿はルイズの目にはなんともユーモラスに映っていたのだから。 「何でもないわよ……ックク」 「昨夜か!?昨夜のアレか!?俺はもう謝ったぞ!」 「じゃあ私が先導するから付いてらっしゃいな」 「おい!」 昨夜のやり取りの事かと思ったゼロが話しかけても、どこ吹く風といったルイズは ゼロをよそに楽しそうに馬を走らせていった。 ブルドンネ街、トリステイン王国で一番の大通りである。 休日で人がごった返すそこを窮屈そうに歩くルイズと、それに付いてくる フードを目深にすっぽり被った何か…もといゼロ。 何があったかというと、街に近づくちょっと前に馬を止めたルイズから 「ゴーレムにしてはかなり例外な見た目だし喋るから目立つわよね…」 という懸念から来る提案で表向きは「自分で喋る珍しいゴーレム」という扱いで行動することになった。 無論ゼロも余計な騒ぎは好かなかったので 「ルイズにしては中々真っ当な考えだな」 と彼女に蹴りを入れられるような感想を返しつつ素直に承諾した。 街の入り口にある駅で馬を預けた時も最初は駅の者に珍しい目で見られたが それだけだったので一安心で街へを繰り出せたのである。 「ん~と、確かこの路地を入って……四辻を抜ければ近くに武器屋だったかな…」 記憶を辿りながらルイズは人ごみを外れて街の裏路地へと入ってゆく。 建物の間に位置する日の差さない路地は昼間でも薄暗く、そこらに汚物やゴミが散らかっており ゴロツキやならず者の溜まり場になっていた。 昼間はそこまでたむろしている訳でもなく、壁にもたれかかったり地べたに座ってる者が ほんの少しいるぐらいでここを通るルイズとゼロを一瞥するとまた視線を元に戻していた。 「おいお嬢ちゃん」 が、もうすぐ四辻に出ようという所で道端に座っていた男に声をかけられてしまった。 そいつがすっくと立ち上がって前に立ちふさがると同時に、後ろからも男が三人ほど こちらに向かって歩いてきておりちょうど挟まれた形になる。 「…ちょっとそこを通して欲しいんだけど」 「通して欲しいってかお嬢ちゃん!げひゃひゃひゃ!」 前にいる男の片方が卑下た笑いをし周りの男達もニヤニヤと笑いを浮かべる。 しかめっ面で対峙しているルイズをよそにゼロは男達の観察をする。 後ろから来た男達はちらつかせてはいないものの腰元に短剣をぶら下げていて いつでも抜けるような態勢になっており、前の男はというと何も持っておらず 腰にも何かぶら下げている様子は無かった。 「(……後ろ三人はともかく前の奴は何も持っていないな、一体どういう事だ?)」 「ここは俺達の縄張りって奴でな、通る奴には通行料を頂いてるんだ」 「で、いくらたかろうってのよ」 「お嬢ちゃん可愛い見た目して言い方キツいねぇ、じゃあ金貨20枚って所だな」 ルイズが買い物に持ってきた金額は新金貨300枚。ルイズが200枚、ゼロが100枚持っており 出せない金額ではないもののカツアゲとあっては貴族のプライドが黙ってはいなかった。 「ゴロツキに出すものは何も無いわ、そこをどきなさい」 いつもの調子でルイズが言い放つとやはり男達は卑下た笑いを浮かべた。 「よぅし分かった、じゃあ払わない場合どうなるかご覧頂こうか」 前に立ちふさがる男が後ろのズボンをまさぐると短い棒――即ちワンドを取り出した。 「悪いが俺はこのブルドンネの裏通りじゃちょいと有名でね」 そう言った片方の男がワンドを壁に向け呪文を唱える。 小さな炎がワンドの先に発生しそれは膨れてあっという間に火球へと変貌してゆく。 ファイヤーボール、火球を発生させそれを放つ火系統の魔法である。 杖を向けた瞬間から身構えるルイズとゼロに余裕ありげに男が話す 「おっと今は当てないから大丈夫、い・ま・は」 そう言うと発生した火球が二個、三個と増えてゆく。 「兄貴を怒らせると痛い目に遭うぜぇ!」 「何せトライアングルだからな兄貴は!治療が追いつかねぇほど爛れちまうかもなァ!」 「悪いが後ろへ逃げようとしても、呪文を唱えようとしても、俺達がブスリ!といくぜぇ…」 後ろにいた男達が腰の短剣を抜いて構える。 「(ゼ、ゼロに何とかしてもらわないと…って剣使えないじゃない! 壊れたからって学園内に置いてきてたんだった!でも壊れてるからあの技は使えないんだし 持って来てもしょうがないって言うか…えーっとえーっと…)」 目があちこちに泳ぎどうしようもないルイズの様子に「カモれる」とふんだ男達がにじり寄ろうとしていたその瞬間であった。 「お待ちください!我々とて争いは好みません、金貨はお支払いしますので 袋から金貨を取り出すまでお待ちいただけないでしょうか!」 ゼロは確かにそう言い放った。 それを聞いて唖然とするルイズと、話がまとまったと思い返事をする男。 「従者さんは賢い事で!おい、お前らそこで止まっときな!何か怪しい素振りをしたら俺が始末する」 「ちょっと!何言っ…」 「お嬢様申し訳ございません!ここはひとつ彼らに!」 ゼロはそう言うとルイズの手を掴み引き寄せる。ファイヤーボールが周囲を照らしているものの 薄暗い場所なので鼻先まで近づかないと深くフードを被ったゼロの顔は見えない。 鼻先までゼロの顔が近くに来た時、小声でゼロが喋った。 「いいか、俺が合図をしたら後ろの三人の男の誰でもいい、手に持ってるナイフを錬金してみろ」 「いきなり何なのよ、そこまで正確に狙いつけてやった事無いし」 「これも経験だ、前のメイジは俺がやる」 「アンタ剣無いじゃない」 「心配するな、手はある」 「手だけあってもしょうがないじゃない!」 「そういう意味の手じゃない!」 「おい従者さんよぉ!いい加減早くしてもらえねぇかなぁ!何なら従者さんから先に焼いちまってもいいんだぜ!」 「申し訳ありません!早速お金を…」 「とにかくお前を信じてるからな」と言いルイズの前に立ち金貨の詰まった袋を前に掲げる。 ひゅぅ、と男が袋を確認しゼロ達に向けていた杖を下ろしたその時。 「今だ!」 ゼロの袋を持ってない空いた片手が男の方に向くのと、ルイズの杖が後ろの男達に向いたのはほぼ同時だった。 「錬金ッ!」 「雷電破(サンダーエレクトロン)!」 ゼロの手から稲妻が男に向かって迸る、それは杖を向きなおした男にとってあまりにも早すぎる攻撃であった。 火球を飛ばす間もなく稲妻が男の体を貫き、火球が虚しく掻き消えながら男が崩れ落ちる。 ルイズの錬金は狙いを外す事無く、見事真ん中の男のナイフに作用しいつもの失敗のようにナイフが爆発した。 「武器屋に走るぞ!」 「う、うん!」 ゼロの呼びかけにルイズが走り二人はその場を走り去ってゆく。 倒れた男の手に持っていた杖が走ってゆく二人に踏まれ、虚しく軽い音を立て割れた。 余談だが、そのほんの少し後に爆発音に気づいた通行人が様子を見に行った所、気絶している男と 何かに吹き飛ばされたかのように壁に打ち付けられて気絶した煤だらけの男三人が発見された。 男達は「貴族のガキとフードを被った従者にやられた」と証言しているものの ここらへんで顔の知れたゴロツキであるのと証言のみで信用に乏しく、この件に関しては 「内輪もめの喧嘩」として処理されたそうだ。 閑話休題 ゼロとルイズは何とか武器屋の前まで辿り着いていた。 周囲を見回しているゼロに対し、恐らくはあまり運動をしていないであろうルイズは すっかり息を荒くしており肩で息をしていた。 「…この様子だと奴らは全員気絶していると見て間違いないだろうな、上手くやったな」 「アンタ…さっき…かっ……雷を…ぜぇ…手から撃ってなかった…?」 「あれも雷龍剣の技だ。まぁかなり加減はしてあるが」 「なんなのよもう…なんでもありじゃない…」 「しかしこれぐらいで息が上がるとは鍛えが足りないな、少し運動しろ」 「う…うっさ…い!」 「店の前で何だいあんたら!買うなら買うでさっさと入りな、冷やかしならさっさと…」 「買うわ!買うわよ!」 いつの間にか武器屋の入り口に立っていた五十がらみの男が、パイプを片手にうっとおしそうに二人へ話しかけてきた。 しかし勢いよく買うわと答えながら振り向いたルイズの胸に紐タイ留めに描かれてある五芒星を見て 「これはこれは貴族様でございましたか!」 と、彼はころっと態度を変えつつ、もみ手しながら二人を店まで案内したのであった。 その頃、魔法学院内の学院長室―――――― 「ミス・ロングビルや」 「はい、なんでしょうオールドオスマン」 「おっぱい揉みたい」 「今度は折りますよ」 いつものようにオスマンのセクハラな質問を書き物をしているロングビルが無慈悲な返答で返す。 「…ちょっと位ケチケチせんでもええのに、まーええわい。ミス・ロングビルや、この間宝物庫の目録を作りたいと言っておったの。 今用事があって宝物庫に入るところでな……行ってみるかえ?」 「えぇ、是非」 施錠の魔法がかかった引き出しを開錠し、大人の掌ほどの頑丈そうな鍵を一つ取り出したオスマンとロングビルは学院長室を後にした。 オスマンの後ろを歩くロングビルの顔が今までにない、歪んだ笑みを浮かべていたのには 前を歩いていたオスマンが気づくはずも無かった。 「ここが…宝物庫」 箱に収められているアイテムが大半であるが、様々な杖がかけられている一画があったり また別の壁に目をやれば見た事も無い剣や鎧などが置かれておりそれらが一体となって 尋常ではない空気をかもし出していた。 「わしはちょっと探し物をするから、ロングビルは目録を頼むぞい」 「はい」 宝物庫の奥へと進むオスマンを見届けると、ロングビルは目録を記しつつ保管している箱や 飾られている鎧をやけに丁寧に眺めた。 「…飾ってあるのは大体かさばるような大きさで…箱は魔法で施錠…流石に今ここで…ってのは無理、ね」 「何か言ったかのー!」 「い、いえ、なんでもありませんわオールド・オスマン!」 「…お、あったあった」 オスマンの方から声が聞こえ、つい声に出してしまったとハッとするロングビル。 しばらく目録を作る作業に打ち込んでいるとオスマンがレビテーションの魔法で大きな箱を三つほど浮かせて持って来た。 「よいしょと、ふぃー…長らくしまっておると出すのにもひと苦労じゃわい」 「それは何ですか?」 「聞きたい?」 宝物庫の開けた場所に置かれた三つの箱を前に、オスマンの手がいやらしくわきわきと動く。 「一揉み100エキューはいただきましょうか」 「…しゅ、しゅみません」 にっこりとした顔でオスマンの襟を締め上げるロングビルにどうしようも出来ず、 素直にオスマンはこの箱について話す事にした。 「これは三つ合わせて「三獣の武具」とワシは呼んでおる。 それぞれ獅子と、梟と、竜をあしらった武具じゃから三つ纏めて“三獣”という訳じゃな」 「三獣の武具…思い出しました、宝物庫に納められている物の中でも指折りのものだと聞いております。 確か斧・杖・盾の三つでしたわね。しかしそのような代物を何故?」 「これを受け取るべき者が現われた、とでも言うておこうかの」 「受け取るべき…者…」 「これでいつでも武具は渡せる準備は整ったの、ではここから出るぞい」 「はい」 オスマンの後に続いて部屋を後にするロングビル。 閉じてゆく扉の向こう側にある三つの箱を見ている眼差しはいつもとは違う、獲物を定める狩人の眼差しであった。 ――――――――――――三獣の武具、今度の獲物はこいつに決まりだねぇ 前ページ次ページルイズの魔龍伝
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前ページ次ページヘルミーナとルイズ ガリア王国、王都リュティス。 数ある酒場の中でも、中の上といった格付けに入る一軒。 様々な層の平民にお忍びの貴族、まっとうな商売人から人様には言えない仕事に従事するものまで、その客層は多種多様。 そこに旅から帰還したルイズたちの姿があった。 火竜山脈での『竜の舌』採集からは既に四日が経過している。 あれから山を下りて街へ戻った二人はそこで一泊宿をとり、ぐっすり眠ってからリュティスへの帰路についた。 当初はルイズが浴びた竜の血が酷い悪臭を発していたのだが、街に戻り次第それを捨てて新しい服を調達、念入りに湯浴みして香水をつてごまかすこと四日、ようやくその臭いからも解放された。 今ならこうして酒場にいても臭いのせいで目立つということもないだろう。 テーブルを挟んで向かい合っている美女二人。 ちびちびと舐めるようにして酒を飲むルイズと、ゆったりとした動作で時間をかけて杯を呷るヘルミーナ。 別に『祝杯』というわけでもない。 採集へ出かけて帰ってきた日の夜にはこうして酒場に足を向ける、これがこの三年間における二人の日常であった。 二人の錬金術師は現在このリュティスに工房を構えている。 表向きは薬屋として、裏では後ろ暗いマジックアイテムでも用意してみせる何でも屋として。 錬金術というものは何はともあれ金を食う、それがルイズが最初に学んだことだった。 魔法学院をあとにした二人は、道々で適当なアイテムを作ってはそれを売り払いながら路銀を稼ぎ、旅を続けた。 そうして辿り着いたのがガリア王国は王都リュティス。 人口三十万人を誇るハルケギニア随一の大都市、そこに二人は工房を据えることにした。 人が多く活気もある、これは裏を返せばろくでもない人間も多数集まっているということだ。 ヘルミーナとルイズは最初しばらくの間は宿に腰を据えて、こうして酒場に出入りして依頼人を捜すことを繰り返した。 そうやって一月もたつ頃には、街の大通りから一本入った通りに面した一軒家を借りられるくらいに、纏まった金が集まっていた。 この頃になると既にルイズは、錬金術というものが金になると学んでいた。 無事王都リュティスに工房を構えた二人は、今度は必要な機材を集めるための資金集めに奔走した。 昼間は薬屋として、夜は事情を聞かないで不思議なマジックアイテムを作ってくれる便利屋として、酒場ややってきた顧客を通じて積極的に宣伝を行った。 ヘルミーナの予想通りというかなんというか、ルイズがあっけなく感じてしまうほどに、二人の名は瞬く間にリュティスの裏側へと浸透していった。 何より二人にとって何より幸運であったのは、ガリア王国で常に燻っている政争の存在であった。 事情を詮索せずに、金次第ではどんなアイテムでも作ってくれる店。それは彼らにとっては実に歓迎すべき存在であったのだ。 官憲の手がまわりかけたこともあったが、そのうち何度かが勝手に解決されたことになっていたのは、お互いに持ちつ持たれつの関係を築けたという証左だろうか。 そうやって工房を構え、名前が売れてきてからも、ルイズたちは定期的に酒場に顔を出すことを欠かさなかった。 勿論営業努力という面もあったが、二人の本来の目的は金などではないのだから、その真の意味合いは情報収集にあった。 酒場の客や情報屋からえられる情報、そのうちに少しでも興味が引くものがあれば西へ東へ飛び回るのである。 この日も、新たなる情報と仕事の依頼を求めて顔を出していたルイズとヘルミーナだったが、結果は芳しくなかった。 こうなると特にやることもないルイズは酒を飲むことくらいしか時間をつぶす方法がない。 片手にグラスを持って、あまり美味しそうには見えない飲み方でちびちびと酒を舐める。貴族様が好んで飲むような高級ワインではない、平民も口にするような蒸留酒。 ルイズには酒の味は大して分からなかったが、ヘルミーナに言わせると値段の割には悪くないらしい。 手持ち無沙汰になった左手では手にしたネックレスを弄っていた。 アクセサリーのようなそれも、錬金術師としてルイズが制作したものの一つだった。 一見すると菱の形に整えられた黒い水晶、しかしその正体は錘の形の容器に入れられた黒い液体であった。 暗黒水。錬金術によって作られる毒薬の中でもとびっきりの劇薬である。 並の錬金術師には目にかかることすら適わない、大海原のように奥が深い錬金術の中でもかなり難しい部類に入るそれを、自前で作り出せる程にルイズの腕前は上達していた。 元々勉学に関しては得意な方であったルイズは、明確な目的を備えたことで錬金術という学問において目覚ましい成長を遂げていた。 ヘルミーナが言うには「私ほどじゃないにしろ、あなたも十分に天才ね」とのこと。 「あれ……おめぇ、娘っ子、ルイズ! ルイズじゃねぇか!?」 近くから、どこかで聞いたことがあるような声が聞こえた。 幻聴が聞こえるほどには飲んでいない。ルイズは左右を見渡して声の主の姿を探した。 「おい俺だ! 俺だよ! こっちだこっち!」 ルイズがそちらを向くと、隣でテーブルに突っ伏していびきをたて寝ている男の姿が目に入った。 「また、酒弱くなったのかしら」 元来強い方ではなかったのだが、ザルのヘルミーナに付き合っているうちに、多少は飲めるようになったルイズである。 「そっちじゃねぇ! こっちだよ! テーブルの下だ!」 訝しんだルイズがそちらの方を見てみると、そこには一振りの大剣が転がされていた。 ルイズの中で、やや胡乱になっていた記憶のピースがかちりと嵌る。 「あら、お久しぶりね。デルフリンガー」 だらしなくぐーぐーと寝ている傭兵風の男の足下、そこに転がっていたのはかつての使い魔、あの少年の手にあったインテリジェンスソード、デルフリンガーであった。 当時よりも薄汚れて錆が浮いているようだ、つまりは今の持ち主はその程度ということなのだろう。 「こんなところじゃぼちぼち話もできねぇ、ちょっと俺をそっちのテーブルの上に置いてくれよ」 「私から話すことなんて一つもないわ」 冷たく切り捨てるルイズ、だがデルフリンガーは食いついた。 「そんなこと言うなよ。おめぇさんだって、あのあとのことが気になるんじゃねぇのか?」 「興味ないわ」 取り付く島もない様子のルイズに、デルフリンガーはそれでも引き下がらない。 「いいから俺をそっちにあげやがれ! こうして出会ったのはきっと相棒の導きなんだよっ!」 大声をあげたデルフリンガーに、酒場中の注目が集まる。自然とその方角にいた二人にも視線が刺さった。 「話くらい別に構わないじゃない」 ヘルミーナから「あまり目立つことはするな」という意味の台詞。 ルイズは嘆息を一つ漏らし、仕方なくといった手つきでデルフリンガーをテーブルの上へと置いた。 「いやぁ、それにしても久しぶりだな娘っ子!……って、もうそんな歳でもねぇのか。嬢ちゃんって呼んだ方が良いか?」 「別に。呼び方なんて何だって良いわ」 その声を聞くのも不愉快だというふうにそっぽを向いてルイズはグラスの中身を舐めた。 「つれねぇなぁ……以前はもう少し付き合いが良かったぜ」 「そういうあんたは変わりないようね。凄く気に触るわ」 「そりゃあ、俺はインテリジェンスソードだかんね。ちょっとやそっとじゃ変わらねぇよ」 カタカタと柄が鳴る、ルイズはこれがこの剣が笑うときの仕草であったことを思い出した。 「お前さんは……随分と変わったみたいだな」 ルイズはつまらなそうな顔のまま、デルフリンガーの言うことをじっと聞いていた。 遮る声が入らなかったことを続けても構わないと受け取ったのか、デルフリンガーは言葉を続けた。 「背丈も伸びたみたいだし、ぺたんぺたんだった胸もちったあ膨らんだみたいじゃねぇか。何よりそう、……美人になったよ。もしも相棒が生きてりゃ、きっと見惚れてたと思うぜ」 ガシャン という音が響いた。 酒場を満たしていた喧噪がピタリと止み、一瞬の静寂が世界を支配する。 ルイズはこのとき初めて店内に竪琴を奏でている奏者がいることに気がついた。 客たちの視線が視線が一斉に音の方向へと向く。そこにはテーブルにグラスを勢いよく降ろしたルイズの姿。 その表情は先ほどまでと変わらぬ無表情だったが、凍えるような冷たさを秘めたものになっていた。 静けさはいつまでも続かない。水が低いところに流れ落ちるようにして、すぐに人々の発する騒音に飲み込まれ、取って代わられた。 人々はもう先ほどまでの静寂など忘れたように、飲んで唄って馬鹿話に花を咲かせている。 ただ一つ、ルイズたちの座るテーブルのある一角を除いて。 「……悪かったよ。その服で、気づくべきだった」 ルイズの身につけた黒い服、それが喪服であることに気づけなかったのは彼らしくない迂闊であった。 陶器でできた仮面でも被っているように冷たく非人間的な無表情をしたルイズに、デルフリンガーが詫びを入れる。 「……」 「すまねぇ」 デルフリンガーにとって何とも気まずい沈黙が舞い降りた。 何も喋らないルイズであったが、その無言はむしろデルフリンガーに息苦しい重圧となってのしかかる。 厨房で作られた美味しそうな香りを放つ料理を運ぼうとしていた給仕が、避けて通った。 すえたような臭いを放つ平民の酔っぱらい二人組が、そばを横切ろうとして思い直す。 男のいない席で酒を飲んでいる美女二人を見つけた優男が、声をかけようか考えて結局諦めた。 そういったある種の『触れてはいけない空気』の底に、ルイズたちのテーブルは沈み込んでいった。 「辛気くさくていけねぇ! 話題を変えるぜ娘っ子。それで、あのあとのことはちったあ聞いてんのかい?」 耐えかねたのか、わざとらしいほど明るい声でデルフリンガーが次の話題を提供した。結局呼び名は以前のまま『娘っ子』で通すことにしたらしい。 彼なりの気遣いなのだろうが、それすらも今のルイズには気に入らなかった。 「さっきも言ったけど、そんなことに興味はないわ。知らなくたって別に私は困らないもの」 「んじゃそれでも構わねぇよ。俺が勝手に喋る、お前さんはそれを聞く。これでどうだ?」 「……勝手にすれば」 ルイズはテーブルにあった酒瓶を手にとって、中身をグラスへと注いだ。 舐めるようにして飲んでいたはずなのに、いつの間にかグラスの中は空になっていた。 「お前さんたちがいなくなっちまって、学院はもう大騒ぎだったんだぜ。特に姉っ子二人の慌てようったら……」 そう語り始めたデルフリンガーの昔話は、ルイズにとっては知っている事実と、予想できる範囲の出来事の、実につまらない内容であった。 手紙も残さず消えた名家の子女と怪しい女。二人の失踪は役人によって連れの女による誘拐と判断され、即刻トリステイン中にルイズの似顔絵と背格好、連れの女の人相などが書かれた手配書がまわされた。 しかし彼女たちの行方はようとして知れず、有力な手がかりがつかめないまま時間だけが経過した。 その先の春期休暇、夏期休暇にはルイズの学友たち、キュルケ、タバサ、ギーシュ、モンモランシーによって遠隔地や都市を巡る自力による捜索も行われたらしい。 それでも、彼女たちの学院卒業までに集めることができた情報といえば「それらしい人影がガリア方面に向かう馬車に乗った」という目撃証言だけだったそうだ。 そうして一年と少しの時間が過ぎ、ルイズの同窓たちは卒業を迎え、それぞれの進路へ旅立っていった。 エレオノールとキュルケたち、それにコルベールの嘆願でそのままにされていた寮の部屋も、彼女らの卒業と共に片づけられ、今では別の生徒が使っているそうだ。 同時、休学扱いとなっていたルイズの学籍も正式に退学となり、学院にはルイズが在学していたという痕跡は何もなくなった。 書類の上ではルイズの所持品ということになっていたデルフリンガーにはこのとき、エレオノールに引き取られてヴァリエール家の所有になるか、コルベールが身受けして学院の備品となり、引き続き居残るかの選択肢が与えられた。 そして、結局デルフリンガーが選んだのは第三の選択肢。 デルフリンガーはエレオノールに自分を武器屋に売却して欲しいと頼み込んだ。 どこか一カ所に留まるよりも、世界中を行き来する誰かの手に渡れば、もしかすると再びルイズに出会える日が来るかもしれない。 何よりも自分は剣だ、武器だ。屋敷の倉庫や学院の研究室に放置されるのは、自分の在り方じゃない。 例え持ち主を失っても、次の持ち主の手に渡り振るわれることこそが自分の在り様なのだと、デルフリンガーはエレオノールを説得したらしい。 結果、エレオノールはデルフリンガーの言う通りに彼を武器屋へ売却した。 そうして半年、ついに買い手がついたデルフリンガーは、新たな持ち主の剣となった。 その持ち主とやらが、今ルイズたちの隣のテーブルで気持ちよさそうに寝ているこの男らしい。 「それにしても、ガリアにいたってのは驚いたぜ。それに印象も随分変わっててよ、オデレータオデレータ」 黙ってデルフリンガーの話を聞いていたルイズ。先ほど継ぎ足したはずのグラスの中身はもう半分になっていた。 「馬鹿ね。トリステインなんて探し回っても見つかるわけないじゃない」 ルイズはつまらなそうにそう漏らすと、テーブルの上に置かれたアイスペールから、大きめの氷を取り出してグラスに入れた。 この店の目玉は、店からのサービスとして出される『氷』にある。 普通は高級な酒場で貴族が馬鹿みたいな金額を払ってワインを頼んだ際にボトルクーラーに入れられて出てくる氷。それをこの店ではどんな客にでも、平民でも貴族でも、分け隔てなく出しているのだ。 勿論そのための追加の料金などはとらない。他の店と同じ程度の料金で、きちんとした口にできる氷が出てくるのである。 それには当然ながらからくりがある。 この店にあって他の店にないもの、それがルイズたちの作った製氷器の存在である。 錬金術の研究と応用、そして実践。その上でたまたま完成した製氷器、特に自分たちには使い道のないそれを、ヘルミーナの言い分でこの店に売却したのだ。 それ以来、酒場は連日満員御礼。結果としてルイズとヘルミーナは酒場の店長から、様々な面での便宜を図ってもらえるようになったのである。 「まあ、無事で何よりだ。のたれ死んでやいないか心配したんだぜ」 「……ふぅん」 グラスを手元で揺らすと、中で氷が転がって澄んだ音がした。 別に酒が好きというわけでもない。 ただ、酒を飲んで、やがてその後にやってくる酩酊感は嫌いではなかった。 そういう意味においては、今口にしているそれはワインなどよりもよほど適している。 けれど、今日はなんだか気持ちよく酔えそうになかった。 「まあ、お前さんも色々あったみたいやね」 「そう?」 「見てりゃ分かる」 色々あった、と言われてルイズは自嘲気味に笑った。 確かに色々なことがあった、命を狙われたこともあったし死にかけたこともあった。 錬金術の習得はとても楽しいことだったし、自分の作り出したものが何か成果をあげたときは確かに嬉しかった。 けれど、同時に何もかもが空虚だった。 その空虚の中心には常に一人の少年の存在。彼が隣にいないという、ただそれだけのことで何もかもが色あせて感じてしまう。 刹那的な快楽に身を委ねてみるというのも考えたが、そんなことをしても願うものはえられないと分かるほどには理性的であった。 結果、こうして酒をちびちびとやり、忘れた気になるというのが専ら最近のルイズの楽しみと言えた。 「その後、誰か昔の知り合いとは会わなかったか?」 「ん……タバサは見かけたわね。二回ほど」 タバサ、というか彼女の所属する『北花壇騎士団』というものが、ガリアの暗部にあって結構な知名度の組織であった。 ガリア王国の裏側の顔役ともいえるそこに所属するかつての学友は、今ではルイズにとって同じ業界に身を置く近くて遠いお隣さんであった。 「へぇ、あの青髪か。元気してたか?」 「さあ? あっちは私のことに気づいてないようだったし、私は別にあの子のことなんてどうでも良いからね。体調のことなんて分かるわけないわ」 そう言って薄く笑う。 二度ほどニアミスしたことがあるが、お互いはっきりと顔を見たわけではない。ことが済んだあとに北花壇騎士団に所属するタバサという名の騎士だったと知っただけだ。 「変わったなぁ……」 「さっきも聞いたわ」 「いや、本当に変わっちまったんだなぁって思ってよ。ルイズ、昔のお前さんはそんなふうに冷たく笑うことなんてなかったのによ」 これもまた、予想の範囲内の反応。 「変わったですって? いいえ、むしろ何も変わっていないわ。私は昔のまま、何も変わらず進み続けているだけよ」 「何がだよ。何が変わってないって言うんだよ……あの頃、相棒と一緒だった頃のお前さんと、今のお前さんの、どこが同じだって言うんだよ!」 最初は抑えるように、そして最後は溜まっていたものを爆発させるようなデルフリンガーの叫び。 それを聞いてもルイズは揺るがず、惑わず、静かに応えた。 「サイトを愛しているわ」 「……あ?」 「私はまだ、ちゃんとサイトを愛しているわ。あんたたちとは違う、私はサイトを忘れてないしサイトを諦めてもいない。この手で必ずサイトを蘇らせるわ。そして言うの、きちんと伝えるの、好きだって伝えるの」 そう、何も変わっていない。 この気持ちだけは真実。例え時間と共に記憶が風化しても、この気持ちだけは変わらない。 この先、何があっても絶対に失ってやるものか。 「そうか……お前さんの時間は、あのときのまま凍っちまってるんだな」 寂しそうに呟いたデルフリンガーの声は、六千年を生きながら快活であったこの剣とも思えない老けた声色だった。 「そっちの嬢ちゃん、嬢ちゃんはどうなんだい?」 一瞬、誰に話を振ったのかを理解できない。人の姿をしていないとこういうときに困る、そう思いつつヘルミーナが答えた。 「あら、私のことかしら、デルフリンガーさん」 「おうよ。えっと……すまねぇ、まだ名前を聞いてなかったな」 「ヘルミーナよ。お喋りな魔剣さん」 「よせやい、さんなんてつられるとむず痒くて仕方ねぇ。デルフリンガーで構わねぇよ」 自分に話題が振られることは予想外であったが、その程度でヘルミーナは微笑を崩さない。 「それで、一体何がどう、なのかしら?」 「ルイズが、こう思っているってことを、お前さんはどう思うってことだよ」 デルフリンガーの柄がカタカタと何度も音をたる、それはまるで感情の高ぶりを暗に主張しているようでもある。 「お前さんはこの三年、この娘っ子と一緒だったんだろ。だったら今を一番分かってるのはお前さんのはずだ。そのお前さんから見てどう思うか、俺はそれを聞きてぇって言ってんだよっ」 最後の方は紛れもなく激昂が含まれていた。 デルフリンガーの怒り。 どうしてルイズがこんなふうになってしまったのか、止められたはずだ、導けたはずだという彼の主張。 「すべてはルイズが自分で決めたことよ。それに私はその在り方が間違ってるとも思わない」 そうしてヘルミーナの脳裏に思い出されたのは、古い記憶。 彼女かつて、封印され禁忌とされた伝説の秘技を用いて、一人のホムンクルスを創造した。 ヘルミーナが十歳の頃である。 彼女はホムンクルスに『クルス』という名を与え、本当の家族のように愛を注いだ。 一緒に街を歩き、風を感じ、木陰で休み、ものを食べ、鳥の囀りを聞き、水の冷たさを感じた。 姉妹のような存在はいたけれど、むしろ彼女はライバルで、ヘルミーナにとっては、自分が作り出したホムンクルスこそが本当の弟のように思えた。 ヘルミーナは本当に、惜しみなく彼に愛を注いだ。 しかし、別離は突然訪れた。 人造生命として創造された彼は、試験管の外では二十日しか生きられなかったのだ。 クルスが動かなくなる直前、二人は最後の、別れの言葉を交わした。 ――クルス、思い出、わすれない。 ――え? ――たのしい。悲しい。うれしい。さみしい。くるしい。クルスはわすれない。ヘルミーナとの思い出、わすれない。 ――ありがとう……。あたしもクルスといっしょにいた時間、忘れない。絶対忘れないよ……。 ――おやすみなさい……クルス。さようなら。 忘れてはいない。いや、生涯忘れることはないだろう。 動かなくなった彼を前に、泣くことしかできなかった自分を覚えてる。 彼を作り出したことを後悔した。彼を助けられなかったことを後悔した。 泣いて泣いて、涙が涸れる程に泣いたそのあとに気がついた。 自分にもっと力があれば、こんなことにはならなかったと。 だから私はそのときに決意した。この身のすべてを錬金術に捧げることを。 この悲しみを忘れない。 そして誓ったのだ、この技術を悲しみとともに伝えていこうと。 ヘルミーナは正面に座るルイズを見た。 彼女の在り方は間違っていない。愛するものを忘れず、それを貫こうとする意志は崇高とも思えた。 故に、ヘルミーナはルイズを導く。 自らの錬金術が、人の悲しみを癒やすことができると信じて。 「彼女がそうしたいと望むなら、私は喜んで手を貸すわ」 その答えを聞いたルイズは顔を上げて、しっかとヘルミーナを見返した。 「私は、このまま錬金術の研究を続けたい。そして、いつかサイトを蘇らせたい。今の私が思うことはそれだけよ」 そのルイズの言葉を聞いて、ヘルミーナは小さく微笑みを返した。 出会ったときにヘルミーナの言葉がルイズに届いたのは、同じ痛みを背負ったもの同士の共感かもしれなかった。 もしそうなら、よく似た二人が近い道を歩むことになったのは必然であったのだろう。 「……そうかい。それじゃあ、俺から言うことはもう何もねぇよ」 サイトと心を通じさせたデルフリンガーは、結局最後までルイズと心を通じ合わせることはなく、その言葉を最後に口をつぐんだ。 デルフリンガーの沈黙で話は終わったと判断し、ルイズは席を立った。 続いてヘルミーナも席を立ち、あとに残されたのはテーブルの上の大剣一振りだけ。 先に店の外へ出たルイズとは逆方向へとヘルミーナは歩いて行き、奥にあるカウンターの前で会計を済ませた。 そうしてルイズの待つ外へと出ようとしたところで、ヘルミーナの背中に向かってデルフリンガーから声が投げかけられた。 「あいつのこと、よろしく頼む!」 その言葉にヘルミーナは何も答えず、扉を開けて夜の街へと消えていった。 「なあ相棒、どうしておめぇさんは一人で逝っちまったんだよ……。娘っ子はよぉ、相棒のために大事だった貴族の名誉や大儀まで捨てて、あんなになってまでお前さんを追いかけてるよ。でもよぅ、こんなのがお前さんの望みだったのかよ……答えてくれよ、相棒……」 虚空へと消えたデルフリンガーの言葉に、応えはなかった。 前ページ次ページヘルミーナとルイズ
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━┓ 【名前】 ルイズ 【レベル】10 【アライメント】中立・善┣━━━━━━━┳━━━━━━━┳━┻━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┳━━━━━━━┫ 【筋:E-】0 【耐:E-】0 【敏:E-】0 【魔:EX】- 【運:B】40 【宝:-】-┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫ _ --- _ ,,x‐'''"´ `ヽ ./ \ ヽ \ ./ ヽ ヽ .ヽ / | ヘ \ ヘ ゙、 .ハ ./ | ヘ、 _;、ヽ-ヘ ゙、 ハ / / ヽ x|'"ゝ_ヽ\ヘ ヘ | ./ . | . . | | l ゙、 | _,,=-‐テ, ハ l | | | . . |_,-|ナてリゝ _ ,、 | /| | . .| | | . | . . | . . | `` `' / | | | . ゙l |、 | | / | | | ゝ、|ヽ|ヽ、 |、 、 ./ . | | \ ゝ、ヽ __ / / | ゙l . . ``ヽ r、 { / ヘ .| | l > .| |_ <ヘ /l ヽ / | | | ;;- | | _xヘ |、_ \ / ノ | | ̄.. .| | /ヽ ,ヽ ト、``¨ヽ `ヽ / / .| |. | |y ∨ \ ヽ ヽ、 ヽ ./ / ./ |. | | ヽ 〕 ヽ `i バ、 ./ / ./ / /`ヽ | ./ .〉 ヘ l ハ / ./ ./ / / , ´`ヽ| ./ / ヽ | ヘ / / l ./ イ ゚x‐‐/. .'二ヾ| / /、 \ l / / .\ ; / / r''´| r、, 〉| / / /\ ヘ | l /l /‐-゚ヽ / | ゝ.ノ| ||O|/ ./ | / . . . ヽ ヽノ x''"´ ̄`ヽ;/ r‐''/ ゝ__ノ〉|_|| | ゝ、 . . .__〈,, -‐- ゙、┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫【スキル】○ゼロのルイズ: 時計塔の大貴族である一族の歴史の中でも類を見ない膨大な数の魔術回路を持ち、 極めて希少な架空元素“虚”と“無”の二重属性を持つ反面、 希少過ぎる属性と特異過ぎる魔術回路から、簡単な魔術すら制御できず暴走させてしまう。 時計塔きっての神童にして問題児にして落ちこぼれ。ついた徒名が”ゼロ”のルイズである。 [DATA] サーヴァントへ魔力を供給する際、このキャラクターの【魔】を「150」として計算すること。 +初期時 [DATA] サーヴァントへ魔力を供給する際、このキャラクターの【魔】を「100」として計算すること。 ○失敗呪文: E- 暴走した魔力をガンド撃ちの要領で目標に向けてぶっ放す、ルイズが唯一使用できる魔術? 並の魔術師なら一瞬で枯渇するほどの魔力を用いたその一撃は、着弾と同時に大爆発を起こす。 効率を度外視すれば、一工程で連射できる非常に剣呑な術式である。 [DATA] 戦闘の開始時に30点の魔力を消費する事で使用を宣言できる。 このキャラクターの【魔】を「50」に変更し、ステータス比較の際に同点の魔力を消費することで、 選択されたこのキャラクターのステータスを【魔】と同じ数値に変更できる。 この効果はステータス比較毎に使用でき、変更されたステータスに対して自陣は「対魔力」の効果を受ける。┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫【???リスト】○魔力放出: A 武器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって、能力を向上させる。 膨大な魔力はルイズが意識せずとも、濃霧となって体を覆う。 [DATA] 戦闘開始時に「このキャラクターの【魔】÷2+10」点までの任意の魔力を消費すること。 消費した魔力5点ごとに、このキャラクターの【筋】【耐】【敏】のいずれかのステータスに「+5」の修正を加える。○合気: A [DATA] 1戦闘に1回、【筋】【耐】【敏】のステータスが選択された時に使用を宣言できる。 選択されたステータスで敵陣が使用した数値的な修正を全て無効にする。○勇猛:A [DATA] 【筋】【耐】【敏】の内、最初に選択されたこのキャラクターのステータスに「+15」の補正を与える。 また、1戦闘に2回、このキャラクターがペナルティ修正を受けた場合、それを「15」点分まで打ち消す。○宗和の心得: A [DATA] ランダムステータスの選択の際、【運】以外のどれか一つの候補を、 既に選択されているステータスに変更する事ができる。○圏境: A [DATA] 戦闘時、敵陣の全参戦者のステータスに常に「-15」のペナルティ修正を与える。 また、「A+」ランク以上の感知系スキルを持たない相手には「先制攻撃」を行え、常に自陣から先にステータス比較を行える。 さらにこのキャラクターへのステータスに対するペナルティ修正を常に「15」点まで無効化する。 1ターンに1度、1戦力以上の優位を得た戦闘で敗北した時、 魔力を「90-自陣の勝率(最低40)」点消費する事で、令呪を消費せずに戦闘から離脱できる。○戦闘続行: A [DATA] 1戦闘に1回、勝率判定を振り直す事ができる。この際、自陣の勝率に「+12」%の補正を加えること。 戦闘に敗北した場合でもこのキャラクターは消滅を免れ、戦闘終了時に魔力残量を「-94」点に変更される。 この状態で1度でも戦闘を行うか、3ターン以内に魔力量を0以上にしない限り、魔力の残量に関わりなく消滅する。○仕切り直し: A [DATA] 勝率判定を行う直前に使用を宣言できる。「自陣が受けている戦力の劣位数×25」点の魔力を消費する事で、 自陣営は令呪を消費せず、その戦闘から離脱する事ができる。○ルーン: A [DATA] 戦闘の開始時、このキャラクターの任意のステータス1つに「+15」の補正を加える。 またステータス比較時に【魔】のステータスが選択された際、自陣の任意のステータス1つに「+15」の補正を加える。○法術: A [DATA] 【魔】のステータスが選択された時、自陣の【魔】に+「15」の修正を加える。 敵陣にサーヴァントや「属性:悪」、または「怪力」等の霊系、魔物系スキルを持つキャラクターがいる場合、 次に選択された敵陣のステータスに「-15」のペナルティ修正を与えること。○宝石魔術: A [DATA] 「使い捨て礼装の作成」で「魔宝石」を選択した場合、成功率が「100%」に変更される。 また、ステータス比較の際に「魔宝石」を1個消費する事で、 比較で選択された【宝】以外の自陣のステータスに+「15」の修正を加える。 この効果はステータス比較毎に「魔宝石」を消費する事で使用する事ができる。○高速詠唱: A [DATA] 【魔】のステータス比較で勝利した時、10点の魔力を消費する事で使用を宣言する。 次に選択される【魔】以外のステータスでも「法術」「ルーン」の効果を受けるようになる反面、 自陣は「対魔力」のペナルティ修正を受けるようになる。○呪歌 : A [DATA] 戦闘の開始時に使用を宣言する。 その戦闘の間、敵陣が持つ「Bランク」以下のスキルは使用を宣言できず効果を発揮しない。○気配遮断: A [DATA] 戦闘の開始時、「不意打ち」として扱い、最初のステータス比較を自陣から先に行える。 敵陣に 同ランク以上の「○直感」や探知系スキル持ちがいる場合、「不意打ち」は発生しない。 また、1回目に行われるステータス比較で、敵陣の全キャラクターに対し「-15点」のペナルティ修正を加える。○追撃の心得: A [DATA] 戦力の比較で勝利した時、次に選択されるステータスに「+15」の補正を得る。 また、敵陣が戦闘から離脱する際、同ランク以下の撤退を支援するスキルや宝具の効果を無効化できる。○騎乗: A [DATA] 自陣の勝率に「+12%」、最初のステータス比較で選択された自陣のステータスに「+15」の補正を加える。 この効果は戦闘の開始時に専用の「使い捨て礼装」1個を消費しなければ使用できない。○変装: A [DATA] 通常の透視能力でステータス情報を確認する事ができなくなる。 但し、相手がAランク以上の「◯直感」「◯心眼(偽)」等のスキルを持つ場合、この効果は無効となる。○心眼(真): A [DATA] 勝率を計算し宝具を使用する前の時点で自陣の勝率が「60%」以下の時に使用できる。 ステータス比較の中から1つを選択し、選択した自陣の数値を未使用のステータスに変更しても良い。 この効果で戦力の優劣が変化した場合、勝率の再計算を行う事。○千里眼: A [DATA] 「サブ」で参戦した場合でも【筋】【耐】【敏】【魔】のステータスを半減せず使用できる。 また、敵陣に「A」ランク以上の「気配遮断」等の隠蔽系スキルが無い状況で自陣から襲撃を行う場合、 「狙撃」を選択でき、互いに「メイン」にキャラクターを配置せず、このキャラクターを「サブ」にして戦闘を行える。 この時、敵陣が「1戦力の優位」を得た時点で、両陣営のステータス半減が解除される。○陣地作成: A [DATA] 行動ターンに「陣地作成」を選択できる。(一つの霊地につき2回まで) 1回目で「工房」に、2回目で「神殿」になり、以下の補正を受ける。 「工房」:霊地による回復量2倍。この霊地で戦闘時、自陣の「基礎勝率」に 「+18」%の補正を与える。 「神殿」:霊地による回復量3倍。この霊地で戦闘時、自陣の「基礎勝率」に 「+36」%の補正を与える。○道具作成: A [DATA] 「礼装作成」の判定に「+このキャラクターの【魔】×2.4」%の補正を加え、 「最終的な達成値÷100」個の礼装を得ることができる。○専科百般: A [DATA] このキャラクターのスキルに設定されている数値的な効果の内、 ステータス等を加算する効果であれば+「5」、補正を加える効果であればさらに「1.2」倍する。(適用済み) また、戦闘以外で行う判定の達成値に+「30」%の修正を加える。┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫【使い捨て礼装】なし┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫【解説】 時計塔所属の魔術師の少女。 ラ・ヴァリエールという名門貴族の娘だが、どうやら周囲から干されている模様。 “歩く爆弾魔”“教室壊し”“時計塔の秘蔵(しておきたい)っ子”、“ゼロのルイズ”等々、様々な徒名がある。┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ サタナエル時のステータス 戻る
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前ページ次ページ聖剣と、ルイズ 「すげ……」 誰かの呟きの通り、それは凄まじかった。 今までの爆発とは、明らかに規模が違った。爆風や爆音はいつもの通りだったが、絶対的な範囲の違いが感じられた。爆心は遥か遠くだったのが、その場にいた者達の命を救った。今まで彼女を野次っていた同輩の少年少女達は、爆煙に巻かれながら、自分達と彼女が『全くの別物』である事を、この時点で知ってしまった。 「手応えありよ!絶対に成功したわ!」 自信満々で宣言する、見えざる同級生の少女。恐らく小さな胸を張り、煙が晴れて使い魔の姿を見る事を心待ちにしているのだろう。今まで自分を嘲ってきた連中を見返す事が、やっとできると。既にそれは達成されているが、憐れな同級生の姿が、彼女────ルイズには見えなかった。 やがて、煙は少しずつ晴れ、だんだんとそのシルエットを現す────筈だった。 その場にいる全員の視線の先に、いつまで経ってもそれは姿を見せない。全員が、今までの爆発の中心を見ていた。抉られた大地、それだけだ。 「なんだよ、驚かせやがって」 「やっぱりゼロはゼロね」 「これが最後って約束だろ?」 「何が『絶対に成功したわ!』よ。ただ派手になっただけじゃない」 皆が口々にルイズを罵る。不安の裏返しだった。あんな威力、どんなメイジであっても絶対に出せない。自らの存在理由を脅かされそうな、そんな予感から自分を護るための、僅かな抵抗だった。 少ない例外は、赤い髪の少女と蒼い髪の少女、そして禿げ上がった中年くらいだった。 彼らも、失敗したと思っていた。この時は、まだ。 「あー……、ミス・ヴァリエール。残念だが……」 「……なあ、あれ、さっきまであそこにあんな塔あったか?」 禿げ上がった中年、コルベールの言葉は、その小さな問答により、波紋の様に広がったざわめきにかき消された。 「塔?」 「あれだよ。かなり高い」 「何個かあるぞ?」 「何あれ」 学園の塀の向こう、森の先に、空を切り裂く様な長い黒いシルエットが見えた。細く遠く、高い。幾つかの最も近い『それ』もかなり高いが。最も遠いそれは、一際眼を惹いた。 「なあ、もしかして……」 「もしかすると、ね」 数人の生徒達が、レビテーションやフライの魔法で宙に浮かぶ。上からなら、何か見えるかも知れない。そう思ったのだろう。 果たしてそれは正解だった。彼等の眼には、有り得ないものが映っていた。 やたらと静かな上空が気になったのか、一人、また一人と彼等に続いて宙に浮かぶ生徒が増える。そして、それを見て絶句するのだ。 唯一飛べないルイズと、赤髪と蒼髪の少女達、そして教師であるコルベールだけが、大地に残された。 「なんかとんでもないものが見えるみたいね」 赤髪の少女、キュルケが最も遠い塔を見て呟く。 「…………」 蒼髪の少女、タバサは無言だ。何かを考えている様にも見える。 「なに……なんなのよ……私にも見せなさいよー!」 ルイズは喚いている。 それを尻目に、タバサは召喚したばかりの使い魔、風竜の背に乗る。そしてキュルケに眼をやると、彼女は頷いた。最後にルイズに視線をやり、 「乗る」 とだけ、言う。その意味を理解した瞬間、ルイズは風竜に飛び乗った。 そこには、壮大としか言えない光景があった。 森だった場所が綺麗に円形に切り取られ、その中心に最も高い、有り得ないくらい高い塔がある。その周りに中央の塔の半分くらいの背丈の塔が六つ囲んでいる。かなり間を開けて、その更に外周に背丈の低い建造物と得体の知れない何かが四つ。後は手前側に建造物が四つ密集していた。塔から伸びる道が、離れたそれらが付属物であることを示していた。 余りにも巨大で、余りにも美しく、余りにも禍々しい、余りにも巨大な施設だった。誰もが絶句するくらいに。 そしてこれ程の物を造る技術は、この世界、ハルケギニアには絶対存在しない。有り得ないのだ。せいぜい数十メイルが限度の技術で、何百メイルもある塔をどうやって造るのだろうか。 「綺麗……」 ぽつりと、ルイズが呟いた。確かに、ここまで巨大で、かつ精密な建造物は美しかった。感動、いや、畏怖すら覚える。そこにいる全員がそう感じただろう。 「あー、すまないが、コントラクト・サーヴァントを済ませて貰えないだろうか、ミス・ヴァリエール?」 情緒もへったくれもあったものではない。が、コルベールが声をかけたお陰で、その場の全員が正気に戻った。 「ミスタ・コルベール……これも……使い魔なんですか?」 ルイズが不安げに問うが、 「状況から言って、ミス・ヴァリエール。あなたの召喚した使い魔で間違いないでしょう」 と、太鼓判を捺した。 「…………。……タバサ、あの塔に。お願い」 数瞬悩んだが、すぐに彼女はその光景について考えるのをやめた。これは人知を越えたもの、これが何かなんて考えるのは愚かしい、と、あ、タバサのこと、初めて名前で呼んだ、なんてことは思っていた。 タバサは頷き、中央の塔に風竜を飛ばす。あまりにも巨大で広大なため、風竜でもそこそこ時間がかかる。後ろから同級生達が追ってくるが、風竜に追い付ける筈がなく、次々に諦め、高見の見物に入る。 やがて風竜は高度を下げ、中央の塔の根元の近く、ではなく、それよりかなり手前に着地した。塔の非常識な大きさが、距離を見誤らせたのだ。 「嘘、まだあんなに遠いの?」 どれだけの距離があるのかは判らない。だが、ルイズは風竜を飛び降り、塔に向かって駆け出す。 案外短かったが、それでも走るには長い。一体、幅は何メイルあるのだろうか。天辺からは何が見えるのだろうか。汗だくになりながら、その塔の壁に手を突き、霞んで見えない天頂を見る。初めての、成功した魔法が、前例の無いくらい大規模な『施設』。ひょっとして、私は凄い存在なのか、などと思うのも無理はない。 一通り感慨に耽り、しかし風竜の羽音を聞き、あまりゆっくりしていられないと思ったルイズは、さっさと契約してしまう事にした。 「……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」 呪文を唱え、塔にキスをする。途端、地面が光り、ルイズに何かが流れ込んだ。 その頃、コルベールをはじめ生徒達は中央の塔に向かいながらその光景を見ていた。 巨大すぎて時間がかかる。先行したルイズ達が豆粒の様に小さく見えるのだ、無理もない。 「コルベール先生、この施設、一体何なんですか?」 生徒の一人に訊かれ、師は困り果てた。一見して、ハルケギニアには存在しないものなのだ。学者としての性格が強い彼にも、この施設が一体、どんな目的で、どんな用途があり、どう使うのか、皆目見当がつかなかった。 「わかりかねますな。ハルケギニアにはこんなもの、存在しませんからな。異世界かも知れませんぞ」 故に、そう答えるしかなかった。彼のその言葉は正解だったのだが、今は知る由もない。 と、その施設に変化が起きた。綺麗に舗装された地面が光り輝いていた。 「先生!なにが……」 「わかりません!皆さん落ち着いて!」 騒ぎのだす生徒達を制し、その光景をじっと観察する。眩しい。 やがて光は外側からゆっくりと輝きを失い、一部を除いて完全に消えた。 それはまるで、何かの紋様に見えた。 「まさか、これは……ルーンか?いやはや、これ程大きいと、案外判らないものですな。しかし珍しい形だ……ッ!」 慌ててメモ帳にその図形を書き写すコルベール。今まで抑えていたが、学者としての血は騒ぎまくっていた。 タバサは、眼下に倒れているルイズに向かい、風竜を下ろした。 駆け寄り、首に手を当て、脈が有ることを確認し、ゆさぶる。 「う……」 ただ気絶していただけのようだ。すぐに眼を醒ます。 「う……ん。頭、痛い……」 頭に手を当て、躯を起こそうとはしない。 「大丈夫?」 タバサも心配するが、全く動かない。ぶつぶつと、痛みを訴えるだけだ。眼に光が無い。 「え……?これ、もしかして……ハルケギニア?あれ?」 だんだんと痛みを訴える呟きから、意味の判らない単語を呟く。 「私……?なんで?い……嫌……これ……」 「ここ……世界の……外側?」 彼女の眼は、自分を、いや、世界を『外側』から見ていた。使い魔の一部によって。 痛みを対価にする様に、それが『何』なのか、ゆっくりと理解する。 「凄いわ……私……力を、手に入れちゃった」 感覚の共有で、視界をジャックしていた。この施設と共に召喚された、遥か天空の彼方に存在する、軍事衛星の視界を。 そして、知識も。 「素晴らしいわ、エクスキャリバー。私の、使い魔」 彼女は、聖剣の名と共に、それが異世界の戦略兵器だという事を知った。 前ページ次ページ聖剣と、ルイズ
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前ページルイズの魔龍伝 8.品評会、その裏で 澄み切った朝の空気はゼロには涼しいぐらいであった。 広がる平原の中、抜き身のデルフリンガーを構え相手と相対するゼロ。 「相棒…次の一撃で決まるな」 「あぁ」 涼しい空気の心地良さも、顔を伝う汗の感触も今のゼロにはいらない。 その全神経を目の前に集中させ全ての意識を相手へと収束させる。 一秒が一時間にも感じられるような時の流れの中、先に動いたのはゼロであった。 「うぉぉ――――――――っ!!!!」 デルフリンガーを振りかざし相手へと飛び掛るゼロ、錆の残る刀身が朝日を受けて眩い光を放っていた。 ……… 景気のいい音と共に最後の薪が綺麗に真っ二つに割れた。 「うりゃぁ!」 すかさず二撃目を加え、綺麗に二等分された半円の薪がさらに半分になり四等分されたのであった。 ゼロの後ろには今朝から割った薪がうず高く積まれている。 「よし、これで今日の分の薪は用意できたな」 「相棒ォ~…」 割った薪を手早く縄で括っているゼロに悲しげな声でデルフが語りかける。 「俺っちは薪割り用の鉈とか、オンボロになったから薪割りで余生を送る斧じゃねぇのよ? 国を襲い民を苦しめる凶悪な魔物とかさ、その力で破壊を巻き起こす悪のメイジとかささ…… もっと斬るべき相手ってのがいるんじゃねぇのかって話よ!」 「ふむ……遠くの山にかさ雲がかかっているな。 そのうち雨が降るとなると、シエスタに言っておいたほうが良さそうだな」 その悲しい語りも何処吹く風、ゼロは空を仰ぎ見て天気の事を気にかけていた。 「聞いてよ俺っちの話!!」 「あぁスマンスマン、聞いてるよ」 「じゃあ分かって剣たる俺っちの叫び!!」 まとめた薪を背負い、デルフリンガーを鞘に収めてヴェストリの広場を後にしながら ゼロはデルフリンガーの訴えを聞いていた。 「今日はお前を使って薪割りをやってみたが、思った程切れ味は落ちて無いな。 これなら十分あの鉄剣とタメを張れるぞ、良かったなデルフ」 「じゃあ斬ろうぜ相棒!西へ東へ相手を求めどこまでもっ!」 「それじゃあお前が何者なのか、どうして外見を分からなくしていた俺を人じゃないと見破ったのか、 そしてお前の言う“使い手”とはなんなのか、正直に話してもらわないとな」 「え、え~っとだな…」 「やっぱり忘れてて思い出せねぇや!悪ぃな相棒!!」 「なら駄目だな、諦めろ」 「くぅっ…ひでーやもう…」 この小うるさい剣が来て二日、ゼロとデルフリンガーの間にこんなやりとりが度々あった。 何がしらあるとはゼロも感づいてはいるものの肝心のデルフリンガーがこんな調子なので ゼロの疑問は一向に解決していなかったのだ。 「あっ、あの風竜とかデケェしちょうどいいぜ相棒!! ちょっとぐれぇ使い魔が減っても問題ねぇや、やっちゃおうぜ!!」 「きゅ…きゅいきゅいきゅいーっ!!??」 朝のひと運動なのか、先ほど森から飛んで来たシルフィードにとってその発言は寝耳に水であった。 荒げたような鳴き声になってゼロへと近寄るシルフィード。 「俺に何するんだぁー!!た、助けてくれ相棒ーっ!!」 「今のはお前が悪い、平和な世界の空を暫く満喫して来れば考えが変わるんじゃないかな」 シルフィードは器用にゼロの右肩鎧に刺さっているデルフリンガーの柄を咥えると、それを引き抜き そのままデルフリンガーと共に再び空へと飛んでいった。 「おーいっ!それは俺の武器だから壊さない程度に遊べよーっ!!」 朝日が眩しい青空に、ゼロの声とデルフリンガーの悲鳴ががこだました。 一方のルイズはというと、まどろみの中夢を見ていた…… またルイズは黒い龍に乗って雷雲の中を突き進んでいる。 「まただ…私は何処へ行くの…?」 行き先も分からずそのまま飛び続けていると雷雲の向こう側が光を放った。 それは段々と輝きを増しながら、形を表しながらこちらへと近づいてゆく。 龍、それは三つ首の黄金の龍だった。 黒い龍に乗ったルイズの目の前へとやってくるとその三つ首龍は悠然と語り始めた。 「少女よ…目覚めるのだ…“聖なる心”に……」 「聖なる心?」 「正義の為に…怒れ…その心……雷……剣に……力…を…与………」 「良く聞こえないわ!あなた、何て言ってるの!一体誰なの!?」 「我…名……スペリオ…ル……」 しかし次第にその三つ首龍の輝きは失せ、その実体も透け始める。 「何者…干渉………少女よ……聖龍の……みちび…」 「ちょ、ちょっと!勝手に喋って勝手に消えるって何なのよ!」 「スペリオル!」 その言葉と共にルイズはベッドから跳ね起きた。 外から鳥のさえずる声が聞こえ、窓から差し込む朝日が部屋を柔らかい光で満たしている。 「夢?」 寝起きのぼんやりした頭脳が先ほど見ていた夢を反芻する。 しかし、意識が覚醒するにつれ段々と見ていた夢の内容を詳細に思い出せなくなった。 覚えているのはスペリオルという名の黄金の龍が自分に何かを語りかけて来たという事だけ。 「…変な夢」 そして、いつものように起きて身支度をするルイズであった。 「品評会?」 「そう、今日は二年生が新しく召喚した使い魔をお披露目する会があるのよ。 近郊の貴族や城から王族が来る由緒正しい行事なの。もちろんガンダムも出なきゃいけないわよ」 「俺の剣は見せ物じゃない、そういうのは俺抜きで勝手にやってくれ」 「何よ、アンタは私の使い魔なんだからケチケチしてないでおとなしく出なさい! あの凄い雷を出せば絶ッ対に優勝するわ!ご主人様の名誉を回復するいい機会なのよ!」 「断る!つまらん欲の為に振るう剣は無い」 ゼロと共に朝の食堂へ向かう最中の出来事であった。 一部生徒が集まった決闘よりは全校行事の品評会ならより多くの人間に認めてもらえると ルイズは熱心にかつ一方的にゼロを説得していたものの、とうのゼロはそういう理由で雷龍剣を見せるのを嫌い けんもほろろにルイズをあしらい「出ろ」「出ない」とルイズと言い争いになっていた。 「なーんじゃなんじゃ、朝からつんけんしとると朝食もまずくなるぞい」 「お、おはようございますオールド・オスマン!」 「あぁじいさんか」 言い争いをしているルイズとゼロの後ろからすっとオスマンがやってきた。 突然やって来たオスマンに慌てて挨拶するルイズと、その姿を認めても慌てる事無く挨拶を交わすゼロ。 「ちょっと!オールド・オスマンはここの学院長なんだからちゃんと挨拶しなさいよ! 申し訳ありませんオールド・オスマン!」 ゼロの後ろに回って無理やり礼をさせようとゼロの頭を押すルイズの姿を見て微笑ましくオスマンは語りかけた。 「よいよい、その品評会の話じゃが朝食の後にワシの所へ来てくれんか?」 「品評会は…出なくていいん……ですか……」 「うむ、ゼロガンダム殿は何せこの世界では例外的な外見と能力を持つからの。 王族や近郊の貴族が集まるあの場で能力や姿を晒せば、アカデミーが動く可能性もある。 ミス・ヴァリエールや、そこは承知してくれんか?お主とてゼロガンダム殿が連れて行かれるのは不本意じゃろう?」 朝食後の学院長室、ルイズとゼロの目の前には机に腰掛け頬杖を付いたオスマンがいた。 「これはまた物騒な話題だな」 「そうとも、王立の研究機関ではあるがその研究のためには手段を選ばない連中じゃ。 ゼロガンダム殿ほどの手錬の者なら彼奴等にやられはせんとも、手に入れるためなら何をするかは分からん」 残念な顔をするルイズではあったものの、アカデミーが絡む可能性があるとなると反論のしようが無い。 ルイズもアカデミーの怖さは噂で聞き及んでいるが、何より苦手な長姉がそこに勤めているのが一番恐ろしかった。 ゼロを捕らえようとするならまずこの長姉が飛んで来るに違いない。 「分かりました…私達はその間どうしたらいいでしょうか?」 「ゼロガンダム殿を品評会の間姿を見せないようにするだけでええ。 ミス・ヴァリエールは品評会に出席しても良いのじゃが、まぁ使い魔がいない以上 やる事もなかろうから欠席でもええわい。教師達にはミスタ・コルベールを通じてワシから上手く言っておく」 「しかし…私も一応公爵家の娘です、出ないとなると実家の方にも話が及んで何か迷惑が……」 「ほっほっほ、なーに心配はいらんて。今はアンリエッタ女王陛下がゲルマニアへ訪問しとる最中じゃ。 主要な王族はそっちに出払っとるし、話題もそっちの方にしか関心がいかんじゃろ」 その言葉を聞いたルイズの顔が少し暗くなった。 「アンリエッタ王女が…ゲルマニアへ……ですか?」 「うむ、じゃから今年の品評会に女王陛下は出席せん。今年は幾分静かに会が進行するじゃろなぁ」 魔法学院中央の本塔と、それを中心とした正五角形の頂点に位置する五つの支塔。 その支塔の区切る一角に置いて使い魔の品評会は開催されていた。 注目の集まる壇上にいるのはキュルケとフレイムである。 「フレイム!」 「きゅる!」 キリッとした声でフレイムを呼ぶとキュルケと同じ様に短く、力強く鳴いたフレイムが炎を吐いた。 口を閉じた状態で放たれた為わずかに隙間のある口の両端から勢い良く炎が噴出する。 しかしそれは前へ向かって絡み合い、まるで二重螺旋のような軌跡の炎を描いた。 「はいっ!」 キュルケが再びを掛け声を掛けると螺旋状の炎がぐねぐねと動きハートの形へと変化していった。 この炎には観客や招待された貴族からも拍手が起こっていた…が いちいちキュルケが動いたりポーズをとるたびに彼女の胸が揺れていたので フレイムというよりはキュルケに拍手しているような者もちらほらといた。 オスマンに至ってはスタンディングオベーションという始末である。 しかし、その隣にはいつもいるはずの秘書であるロングビルの姿は無かった。 続いて現われたのはギーシュである。 しかし壇上には彼一人だけであり使い魔の姿はどこにも見当たらない。 一人立った彼は生徒達観客へ素早く視線を滑らせ、一人の女生徒の姿を見つけ出す。 「見てるかいモンモランシーッ!!今日の舞台は君に捧げるよぉ~~ッ!!!」 そう声を張り上げモンモランシーのいる方へと自分の杖でもある薔薇の造花を向けるギーシュ。 あちこちから失笑がこぼれる中、そのモンモランシーはというとすっかり顔を赤くして強張った表情をしていた。 「あンの…馬鹿…っ!」 「フヒヒお熱いねぇモンモランシー」 「うるさいわね微笑みデブ!」 「はがっ!」 丁度モンモランシーの隣にいたマリコルヌがからかったが、モンモランシーが即座に その顔面に肘鉄を打ち込んだ。 「さて…では僕の使い魔をご紹介しましょうか………ヴェルダンデ!」 その言葉と共に壇上手前の地面がぼごっと盛り上がり、そこから何かが勢い良く跳ね出してきた。 まるで川魚が水面から跳ね上がるようである。 ギーシュがレビテーションを細かくかけながらそれを上手く壇上に落ちるように調整すると 重量のある衝撃音をさせながらそれは壇上へと落下した。 「も゙っ」 それは、1メートルほどの大きなモグラだった。鼻をヒクつかせながら静かにひと鳴きする。 「ジャイアントモールのヴェルダンデです!以後、お見知りおき願います事を!」 「あー…自己紹介はそれぐらいにして、使い魔の技巧を見せてくれんかね?」 「技巧?僕のヴェルダンテはその存在そのものがまさに始祖ブリミルの作りたもうた精緻な技巧なのです! いいでしょうかオールド・オスマン、この毛並みはまさに乙女の持つ艶やかでいてコシのある髪そのもの! 並みいる土を掻き分け突き進む事の出来るこの手は大地に根ざす力の象徴! そして見てくださいこのつぶらな瞳!純粋なジャイアントモールの心を写すようではありませんか!」 オスマンに、いや、この会場にいる者全員に伝えようと声を張り上げつつ手を振りつつ ヴェルダンテの魅力を語るギーシュ、よもやその勢いはそう止まりそうに無かった。 「馬鹿…あれは本当の馬鹿だわ…」 「ゲコ」 教師達によるレビテーションで使い魔共々壇上から強制的に下ろされるギーシュを見ながら モンモランシー、そして手の上にちょこんと乗っている彼女の使い魔であるカエルのロビンは共に 心底飽きれていた。 同時刻、品評会を行っている区画の隣の区画…の片隅 「ファイアボール!」 呪文を唱えるルイズの振るう杖が椅子の上に置かれた石ころに向いた瞬間、石ころが炸裂した。 幸い、シュヴルーズの授業でやった時よりは十二分に距離はとっており 風上に立って行ったため立ち上る黒煙もルイズとは逆の方向へと流れて消えていった。 横に山と積んである石の一つを手に取るとまた椅子に置きファイアボールとは違う呪文を唱える。 「レビテーション!」 やはりその石ころも炸裂した。 「錬金!」 三回目の呪文も失敗し、とうとう台の椅子の方が耐え切れずに崩れてしまった。 「うぅ…基礎中の基礎の呪文でもやっぱり駄目じゃないのよ……」 「大丈夫ですよ、ヴァリエール様ならきっと上手く出来ます! ワインだってすぐ樽から出すよりも長い間寝かせておいた方が美味しいじゃないですか!」 換えの椅子を持ったシエスタがルイズの元へやって来る。 「言うのは簡単だけどねぇ……あと、そのヴァリエール様ってのこそばゆいから、ルイズでいいわよ」 「えっと…ル、ルイズ様…で」 「それも実家のメイドみたいで堅苦しいわね…ルイズさん、でいいわ」 「分かりました…えー…ルイズさん」 「うんうん」 しっくり来たといわんばかりの顔でうなずくルイズ。 「でも、メイドの仕事もあるのに手伝わせちゃって悪い気がするわね」 「いえ…それなら私の仕事を引き受けてくれたゼロさんに…」 「いいさ、彼女がしたいって言ったなら俺も異を唱えんよ」 そう言っているゼロは、本来やるべきシエスタの代わりに洗濯物であるシーツを干していた。 朝と違い、右肩鎧のデルフリンガー以外にも腰にも買った鉄剣を差している。 ゼロとしては何か知っているような素振りをしているデルフリンガーが気になるのだが 『私がお金を出したんだから、そんなボロ剣じゃなくてこの私の選んだ鉄剣を使いなさいよ』 とルイズが頑として主張するので彼女と居る時は腰に渋々差しているのである。 ちなみにこのデルフリンガー、今朝の事もあって洗濯物を干すゼロのこの様子には閉口気味であった。 「俺の相棒が…早くも遠ざかってゆく……くぅっ!」 「しかしルイズは出なくて良かったのか?俺があの場に居ないだけでいいってオスマンの爺さんも言ってたのに」 「いいわよ、やる事ないし女王陛下も来ないんだったらわざわざ出る必要なんて無いわ。 だからこうやって魔法の練習をしてるんじゃないのよ。さ、もう一回やるわよ」 ルイズはまた石ころを椅子に置き、呪文を唱え始めた。 更にそのまた隣の区画 ここには本塔の前に佇んでいる何者かを除いては誰もいない。 その何者かは誰か分からないぐらいに目深にを被り、本塔の壁に手を当てていた。 「材質こそ普通の煉瓦だけど…宝物庫のある階だけは念入りに固定化が掛けられていた…。 スクウェアクラスの固定化を多重にかけてちゃあ錬金で破るのは無理…とすると」 懐から杖を取り出すと呪文を唱え、自分の立っている地面へ杖を向けた。 「物理的に破壊か…でもこの壁、馬鹿にぶ厚いのよねぇ」 地響きと共に、立っている地面が隆起していきそれは巨大な土の巨人――ゴーレムを形成した。 「ま、三獣の武具の為、とにかくやっちゃいましょうか!」 ゴーレムの握り拳が、唸りを上げて宝物庫の壁へと激突した。 前ページルイズの魔龍伝
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「やっちゃったね・・・・・」 これで何度目だろう。性懲りもなくまたやってしまった。 食堂から流れてくるおいしそうな匂いが恨めしい。 「きり丸!なんであんなこと言ったの!僕もう昨日から何も食べてないんだよ」 普段はおとなしいしんべえが声を荒げる。無理もない。しんべえにとっては一食抜かされただけでも一大事なのに、丸々一日何も食べることができないなんてのは拷問としか言いようがない。 「まぁまぁしんべえ、きりちゃんだって悪気があった訳じゃないんだし。仕方ないよ」 半ば自分に言い聞かせるように乱太郎が言った。 乱太郎は肩を落とした。まさか、丸一日分の食事を没収されるなんて夢にも思っていなかった。土井先生や山田先生でもこんな罰は与えないだろう。せいぜいゲンコツが飛んでくるぐらいなものだ。 これからどうしようかと考え、隣を見るとボケェと前を見ているきり丸の顔が目に入った。 (きりちゃんもご飯食べられなくてガッカリしてるんだよね) そう思った矢先きり丸の目が輝きだした。乱太郎はこれが何を意味するのかよく知っている。 「金~金金金金かね~」 どうやら彼の探知機が金を探し当てたらしい。 「行ってらっしゃい」 きり丸はこちらの世界の金の音も聞き分けることができるようになっていたらしい。さすがはきり丸である。 しかし、きり丸を見送ってしまってからはたと気づいた。ルイズが食事を終えて戻ってきた時、きり丸が居ないとまた怒られるんじゃないだろうか。 「『使い魔のくせに勝手に歩き回ってんじゃないの!罰として一週間食事抜き!』なんて言われたらどうしよう」 呼び戻そうにも二人とも一文無しである。きり丸召喚魔法は使えない。 「どうしようしんべえ。またルイズさんに怒られ・・・・・あれ?しんべえ?」 乱太郎は隣にいたはずのしんべえに話しかけていたつもりだったのだが・・・・・。なんとしんべえまでもがいなくなっていた。 (どこに行っちゃったのさしんべえ?)私一人にしないでよ。あぁどうしよう、どうしよう・・・・・・・。 「あんた何ぶつぶつ言ってんの?」 キター。 ビクビクして何も言えないでいる乱太郎にルイズは畳み掛けた。 「他の二人はどうしたの?」 「どうしたの?答えないよ」 乱太郎は突然の襲撃に口をパクパクさせていた。怒ってはいないようだが、ルイズの顔が真ん前にある状態で質問されると正常に頭が働かなくなる。 「まさか、何かやましい事でもしてるの?」「ち、違いますよ」 「じゃあ何なのよ」 「トイレに行くって言ってました」 こんな言い訳を考えつくのに普段の10倍かかってしまった。 「あっそう。じゃあ行くわよ」 落ち着いて考えれば心配する必要はなかったのかもしれない。まぁルイズにとって何が気に障るのか乱太郎はわからなかったので仕方がないことではあるが その頃しんべえは久し振りのご馳走を頬張り満面に笑みをたたえていた。次から次へと口に運ぶ。昨日の夕飯は抜かされたし、ここに来てまともに食べた料理と言ったらスープぐらいのものだ。いつにも増して美味しく感じられる。 さっききり丸が金を求めて走り出したのと同時にしんべえは食堂に足を踏み入れた。余りにも美味しそうな匂いだったので磁石の如く引き寄せられてしまったのだ。 一段落してしんべえが口を開く。 「さっきはありがとう。ここの料理美味しいね」 しんべえの隣には青い髪の少女が座っていた。
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前ページ次ページBRAVEMAGEルイズ伝 第一章~旅立ち~ その1 ムサシ登場!! そして旅立ち 小規模なクレーターを前にへなへなと崩れ落ちる少女。 傍らには頭髪の寂しい男性、遠巻きに見つめるのはたくさんの少年少女。 その少女は幾度とない失敗により、爆風と嘲笑を浴びていた。 爆風、というのは彼女の発した魔法によるもの。 というのもピンクブロンドの少女、名をルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 名家ヴァリエール家の三女として、その才を遺憾なく発揮……していない生徒の一人である。 彼女の放つ魔法は、全て爆発という現象に現れる。 『開錠』を行えば扉ごと吹き飛ばし、『錬金』を使えば素材を粉微塵に破砕する。 それ故皆からの嘲りを浴び続ける学院生活を送っていた。 そして、長い一年が終わり進級試験、『春の使い魔召喚』の儀。 皆がルイズが再び一年生となるぞ、と囃し立てていた矢先のことだった。 いよいよ順番が最後、ルイズの番になり、杖を構える。 緊張の為か微かに震える手を振りかざし、呪文を唱え振り下ろし……虚空が爆発した。 まただ、ほらみろと嘲笑の声が飛ぶ。 何度となく、その光景が繰り返される。 次第に少女の慎ましやかながら可憐な容姿は土に塗れていく。 教師の静止も振り切り、傷だらけの体を奮い立たせて杖を振りかざした。 彼女の誇りが、諦めることを許さなかった。 「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ……神聖で美しくそして強力な使い魔よ!」 半ば涙目になりながら詠唱を行う。 決めたのだ。 ここで自分の忌まわしき異名を払拭するのだと。 初めての魔法はここで完成させる! その思いだけで、彼女は体を動かしていた。 「私の呼びかけに……答えてっ!」 杖を振り下ろすと、もう何度も体験した感覚。 目の前が白熱するだけ。 今までにない、一際大きな爆発だった。 いい加減にしろ、驚かせるなと心ない声が飛ぶ。 しかしややあって……皆が、沈黙した。 異様な静けさを感じたルイズが前を向くと、煙に遮られた何者かの陰。 「……やった……」 自分は成功したんだ。 このトリステイン王国の魔法学院に入学してから、ただの一度も成功しなかったこの自分が。 皆に不名誉な二つ名で嘲られ、幾度となく挫けそうになったこの自分が。 皆と同じ魔法を、使えたのだ。 失敗していたら留年となる所だったが、これで再び一年生をやらなくてもいい。 ひどく安堵し、よろよろと立ち上がる。 「……さあ、何なの……?私の、私だけの使い魔!」 期待に小さな胸を膨らませ、埃塗れのブラウスを叩く。 土煙が晴れ、その何者かの姿を初めてその目にした。 何か聞こえる、鳴き声だろうか。 いや、それにしては小さい、よく聞けば穏やかな呼吸音……いや、寝息? 「……子ども?」 驚愕する。 何しろ、目の前にいたのは眠りこけた少年。 小柄なルイズよりさらに頭一つぶんほど小さな少年だった。 しかも、なんともみすぼらしい格好の。 「おい、ぼろを着た子どもだ!」 「ゼロのルイズが物乞いのガキを召喚したぞ!」 「なっ……!」 異変に気がついた生徒達が、召喚対象である少年を見て囃し立てる。 ルイズは頭に血が上りかけたが、しかしよくよく見れば確かに言うとおり。 伸びっぱなしの長髪は頭頂部で束ねてあり、よれよれの上着に足にはボロ靴を履いている。 汚いベルトで留めた見慣れぬ装束を纏い、ひび割れた眼鏡を額にかけていた。 まず、いいところの出ではあるまい。 「おい!失敗したからってその辺の乞食を連れてくるなよー」 「さすがゼロのルイズ」 心無い言葉にきっと振り返るが、言い返すより早くルイズは教師に向けて叫ぶ。 「ミスタ・コルベール、やり直しを……!召喚のやり直しを、させてください!!」 「……残念ですが、それはできません」 「そんな!」 対してコルベールの返答は否定だった。 納得の行かないルイズは尚も迫る。 「人間を使い魔にするなんて、聞いたことも……!」 「だとしてもです。人間であろうと、召喚された以上は契約しなければなりません。 それにこのままではあなたは留年することになってしまいます。私としてもそれはとてもとても悲しいことです」 ルイズの悲痛な訴えにも、教師としてコルベールは首を横に振らざるを得なかった。 この春の召喚の儀式は神聖なもの、やり直しという特例は認められない。 彼女に残された道は、あの少年を使い魔とする他に無いのであった。 聡明な彼女はそのことを重々理解していた。 それ以上食い下がることもなくただただがっくり項垂れることしかできない。 やがて諦めたように、横たわったままの彼女の使い魔となる少年に歩み寄る。 「まったく、どこの子どもよ……なんでこんなチビっこなんかと、私が……」 サラマンダーやら風竜やらの素晴らしい使い魔を目にした後だからか、よけいに落胆は大きい。 やがて大きく溜息をつき、観念したように横たわる少年に顔を近づけた。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与え我の使い魔と為せ」 唇と唇がそっと触れ合う。 異性とこんなことをするなんて生まれてこのかた初めてだったので、ひどく動揺する。 だが相手は子ども、それにこれは儀式上必要なことだ。 ノーカンノーカンとクールに振舞ってみるも、なんだかほかほかしてきた。 頬が熱くなっていることを自覚する。 自らぽかぽかと頭を叩いていると、少年が突然叫びをあげる。 「うわっちちちちちちぃーーーっ!!!」 「きゃ!」 思わぬ反応に思わずその場から飛び退いてしまうルイズ。 少年は熱の根源であろう左手を抑えて、熱さの余り転げまわっていた。 朱塗りの篭手を外すと息をふうふうと手の甲に当て続ける。 「だ、大丈夫?使い魔のルーンが刻まれているだけだから、すぐに済むわ」 「なんだぁ……?ここは、どこだ……?」 「ふむ、コントラクト・サーヴァントのほうは問題ありませんね。おめでとう」 やがて少年が大人しくなり、自分の手を見て目を見開く。 近くにいたルイズに気がつくときっと向き直り、ぴょんと軽い身のこなしで立ち上がった。 近づいてくるその身体はやはりルイズよりも小さい。 歳のころは10そこそこであろうか、意志が強そうな眉と瞳をこちらに向けた。 「やいお前!ここはどこだっ!おいらに何をしたっ!?」 「なっ……」 「……ああっ、よく見りゃ手にイレズミなんてしやがって!島流しにあった覚えはないぜっ!」 声変わりも澄んでいないであろうよく通る声で騒ぎ立てる。 明らかな年下、それも乞食かなにか身分の低いであろう者に怒鳴られたことに、 ルイズの頭はかっと熱を持った。 「へっ……平民の分際で、貴族にそんな口の聞き方を!」 「何ィ!?」 「ミス・ヴァリエール冷静に。ふむ、珍しいルーンですね」 肩の荷が降りたコルベールは、とりあえず目の前の少年に対する疑問はさて置いておく。 手早く少年のルーンを書き写して、見物していた皆に呼びかけた。 「これにて召喚の儀式は終了です。各自学院に戻るように」 呼びかけるとふわりと宙に浮かび、ここからも見える学院の大きな屋根に向かって飛び立った。 同じく生徒たちも空へと舞い上がるが、意地の悪そうな笑みを浮かべ口々に野次を飛ばす。 「ゼロのルイズ!お前は歩いて来いよ」 「『フライ』も『レビテーション』もロクに使えないんじゃあ仕方ないな!」 嘲笑を浴びるも、今は目の前の少年のことで頭がいっぱいなルイズは振り向きもしない。 しかし少年の方は、空中を見つめて驚いた表情だった。 「あいつら飛びやがった!妖術使いか?」 「……メイジが飛ぶのは当然のことじゃない」 「メイジだかショウワだか知らねえが、いよいよおかしいぜ!ここはどこなんだ?」 「はぁ……とりあえずついてきなさいよ、戻るから」 何も知らない使い魔に、やはり世間にも疎い乞食なのかと頭を抱え込む。 溜息を禁じ得ないが、頭から少しずつ説明してやりながら学院への帰路へついた。 「……でね、あんたは召喚されて、私の使い魔にならなきゃいけないの」 「召喚?おいら、また召喚されちまったってのかっ!?」 また?おかしなことを言うものだ。 そんなにしょっちゅう人間が召喚されるなんて聞いたこともない。 まあ、召喚を理解しているフシは説明が省けて好都合だ。 「物分りがいいじゃない、でね、あんたは私の使い魔として……」 「まあいいや。今度こそとっとと済ませて、こんな世界とはおさらばだぜ」 「ちょちょ、ちょっと。何言ってるのよ」 「ん?」 前言撤回。 自然と帰る流れになったのでルイズは慌てて止める。 この使い魔召喚が理解できていたり放棄する気でいたりといろいろおかしい。 ルイズのフラストレーションが積み上がっていく。 「あんたは私の使い魔をやってもらうのよ!何よおさらばって」 「だから、その用事を済ませりゃ元の世界に戻れるんだろ?」 「元の世界?ああもうわけわからないわね!あんたはずっと使い魔!ずっと!」 「なんだって!?ずっと!?」 「ずっとよ!」 「そんなバカな!」 「知らないわよ!こっちだって、あんたみたいなチビで! ヘンなモミアゲな奴なんか!召喚したくなかったわよ!」 「くっまたそう言われるのかよ!?なんだってんだこのチンチクリン!おてんば!」 「キィィィーーーーッ!」 爆発した。 小さいもの同士がぎゃんぎゃんと騒ぎ立てながら追い掛け回したり小突きあったり。 学院に帰るまで、それは続いた。 「……ぜい、ぜい、ぜい……」 「おい、大丈夫かい?」 「う、うる……さい……ぜんっぜん……大丈夫、よ……」 はたから見れば本当に子供の喧嘩のようなことを年甲斐もなく延々と続けてしまったルイズは、 やがてゼイゼイと息を整えながらルイズは立ち止まる。 少年はしばらく落着くのを待ってくれていたが、溜息をひとつ大きくついた。 「ま、いいや。終わっちまったことをいつまで言ってもしょうがねえ」 「へ?」 「使い魔だかなんだか知らないけど、おいらがやりゃあいいんだろ?」 「あ、ああそう……なによ急に」 実にあっけらかんと了承してくれたのは意外だった。 子供らしく聞き分けなく反発するか勝手にどこかに逃げ出したりするかと思っていたが。 彼は案外、さっぱりした人物だったのかと納得する。 とりあえずこれで留年する心配はなくなった。 「見たところ、空飛んだりなんだりで面白そうな奴らがいっぱいいるみてえだし」 「面白そうな……魔法をそんな言い方しないでよ、そりゃまいっぱいいるわよ」 少年の顔つきが変わる。 先程までの疑心を帯びたそれではない、もっと単純な感情。 心の奥から湧き出るような、原始的で直情的なその感情。 『楽しんで』いる。 ひとつの冒険は終わった。 しかし、彼の冒険が、また始まるのだ。 「妙にワクワクしちまうぜ!」 「……あんた変な奴ね……名前は?」 「人に名前を聞くときは、まず自分から名乗るもんだぜ」 「……ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」 少々ムッとしたが、これは正論だ。 若干ぶすっ面で返答する。 大して少年は、立派な髷をガシガシと掻きながら告げた。 後に伝説となる自らの名を。 「おいらはムサシ。よろしくなっ、ルイズ!!」 BRAVE MAGE ルイズ伝 >はじめから 前ページ次ページBRAVEMAGEルイズ伝